弁政連ニュース
〈座談会〉
今こそ、国会において死刑制度に
関する根本的な議論を!(6/6)
関する根本的な議論を!(6/6)
最後に
【伊井】この座談会については、「弁政連ニュース」という冊子に掲載され、国会議員の皆さんに読んでいただくことになると思います。
皆さんから国会議員の方々にお伝えしたいことがあれば、最後に一言ずつお願いします。
【岡野】イギリスでは、国会議員のリーダーシップで、国民的議論を重ねながら、社会の共通認識を構築していったと理解しています。まず、政治が国民的議論のプラットフォームを構築し、その場を通じて、死刑制度に関するあらゆる情報や考え方が開示されることが重要だと思います。
その中で、被害者やその遺族、加害者や加害者の家族、刑務官など死刑執行に関わる方々など、多くの関係者の人権を再確認するとともに、日本としての制度のあり方を、改めて、検討することが期待されます。
【神津】国会議員の方々は、国民の意見を代弁するという立場であることは当然ですが、それは決してアンケート的な世論調査の動向にただ流されるということであってはならないと思います。ましてや最近の風潮としてのSNSにおける極論や、匿名ゆえの無責任なセンセーショナリズムとは明確に一線を画してもらいたい。わが国において長年遅れをとってきた人権の問題、死刑制度の問題について、先見性をもって議論をリードする気概を持ってもらいたいと思います。
そして、かつて国会でもかなり本質に迫った議論がされながら、結局、何もできなかったということがあるので、同じ轍は絶対に踏まないでほしいと思います。
いろいろな課題に対して、きちんと結論を出して、できることをしっかり進めるという政治のリーダーシップを求めたいと思います。
【金髙】現状では、政府も国会も、死刑制度につき、世論調査で8割以上の賛成があることを根拠に、突っ込んだ議論をしていないように見られます。
しかし、国際社会では人権上の問題として批判が高まり、将来は、国外逃亡殺人被疑者の処罰に支障をきたす可能性もある問題ですので、制度の存廃を含めた本格的な検討をし、維持するにしても内外への説明責任を果たす必要があると思います。国民の人権や国の治安、刑事司法に大きな影響を与える議論であるため、国や国会が主導してこれを進めるべきですし、制度や運用についての情報を国民に十分提供して、国民の声を検討に反映させるべきだと思います。
【笹倉】諸外国における死刑廃止への道筋は、ほとんどが政治家のリーダーシップによるものです。死刑制度を維持するかどうかの判断は、一国における人権・人道のあり方の試金石ともなるものだと思います。今後、日本がどのような国でありたいか、あるいはどのような国として他国から見られたいかを考えたときに、死刑制度を維持し続けることが果たして賢明なのかを、長期的なビジョンのもとで考えれば、廃止に傾かざるを得ないはずです。
先ほど申し上げました通り、死刑は「知れば知るほど」廃止方向に考えざるを得なくなる刑罰です。弊学でも、冒頭でお話しした死刑に関する講義のあと、学生たちは大きく廃止方向に意見を変えます。世論も、「知らないこと」によって死刑制度を支持しているのかもしれません。
まずは国会議員の先生方にも死刑制度やその運用実態など、懇話会で扱った様々な論点の現状について知って頂き、その上で、制度をどうするかを理性的に考えていただきたいと思っています。その意味では、懇話会が提言したように、「一刻も早く、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体」を設置し、死刑をめぐる様々な問題について、情報に基づいて検討することが必須ではないでしょうか。
本日は、ありがとうございました。

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