弁政連ニュース

〈座談会〉

選択的夫婦別姓制度の導入を!(6/6)

【本多】日弁連の今の状況、今後どういうことをしていくかについてお願いします。

【佐藤】日弁連は、先に述べた総会決議やワーキンググループ設置により、体制を整えた状況です。

そして、7月には、各弁護士会に対し、地方議会での意見書採択を目指す活動をお願いしました。市民の皆さんが各地で地道に展開されてきた意見書採択の運動を、各弁護士会でも力を入れていただきたいというものです。市民の皆さんと連携を取りながら、日弁連、各弁護士会、各地で頑張っていきたいと思います。

また、会長自らが各所に出向き、発信させていただいています。会長をはじめとした我々日弁連、各弁護士会による積極的な社会への発信、ロビー活動、また、経済界の皆さんとの連携など、積極的に行ってまいります。

来年の通常国会には、ぜひ自民党も含めた形で法案を提出していただき、国会の場で議論し、成立させていただきたい。私たちも頑張ります。

【本多】国会議員の皆さんや政府に望むことをお願いいたします。

【野口】国会議員の皆さんがそれぞれの政治信条に従って活動されることは当然なことで、やむを得ないところはありますけれども、忘れて頂きたくないのは、国会議員はあくまでも「全国民の代表」だということです。特定の支持母体のためだけの活動をするのではなく、「最大多数の最大幸福」のための活動に徹して頂きたいと思います。国民の意見が分かれているのであれば、その双方が幸せになれる結論が明確にあるわけですから、単純にその結論を選択して頂きたいです。

保守派の皆さんは「夫婦別姓を導入すると家族が壊れる」と仰いますけど、夫婦別姓を望んでいる家族に別姓婚を認めたところで、「その家族」が壊れることはありません。保守派の皆さんは「国家という大きな家」が壊れると仰っているのだと思いますが、その価値観自体が現行憲法の施行により否定されたのであって、先の大戦の反省はどこに行ったのかと強く思います。

多様性が認められる世の中はどうしてもバラバラにはなるわけですが、一人ひとりが自分の好きな生き方・得意な生き方で遠慮しないで生きていく、それが社会全体の活力につながっていくのだと思いますので、そのような寛容な社会の実現を目指して頂きたいと願います。

【井田】当事者の声を国会議員の方々に届けて6年目になりますが、まだまだ全ての方には届けられていません。子どもがかわいそうであるとか、家族が壊れるというご懸念をお持ちの方には、ぜひ当事者の困り事や、別姓の家庭の話を聞いていただければと思うので、もし何か疑問があれば、イメージでお話をするのではなく、ぜひ当事者の声を聞いていただきたいです。

私個人は、これは人権の問題であり平等の問題だと思っていますが、経済合理性と少子化の観点、この二つでもいいので、ぜひ興味を持っていただきたいです。

経済合理性、人口の半分が働きづらい状況をこのままやって放置しておくとどんどん日本の国際的な競争力が下がっていく。

また、少子化についてですが、国立社会保障・人口問題研究所で初めての女性所長に就任した林玲子さんは、日経新聞で「選択的夫婦別姓の導入は、少子化対策の観点からも見逃せない課題」と述べています。自分の姓のままでいられるならすぐにでも結婚したいという人に結婚できる選択肢を設けず、何が少子化対策かと思います。マッチングアプリや婚活事業をやる前に、結婚したい人をまずさせてあげる。そういう寛容な政治をぜひお願いしたいです。来年の通常国会で法案が成立することを願っています。

【大山】一人ひとりの姓名は、性別にかかわらず、自分のキャリアそのものであったり、人生が凝縮されたもの。だからこそ、Forward Looking(未来志向)な発想で、次世代の皆さんのためにも、多様な価値観を尊重し、選択肢のある社会を実現する。そのシンボリックな政策として、選択的夫婦別姓を一刻も早く実現していただけることを強く願います。

(2024年8月9日実施)

※① 地方議会における選択的夫婦別姓制度の推進の意図での意見書は、2024年10月9日現在で424件にのぼっている。

※② 共同通信が全国の都道府県知事と市区町村長に実施したアンケート調査の結果が本年9月16日に公表された。それによると、全国首長の約8割が選択的夫婦別姓制度導入に賛成している。



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