弁政連ニュース

〈座談会〉

今こそ再審法の改正を!(5/6)

今後の議連の活動

【秀嶋】今後の議連の活動、それから法改正に向けたスケジュールなどに関して、柴山議員にお尋ねします。

【柴山】次回は台湾の法曹からのヒアリングを行う予定です。日本の中で理屈だけで議論をしているのではなくて、ほかの国がどういう考えの下で再審の手続きを充実させていったかということを虚心坦懐に勉強していくことによって、それが日本における立法手続きの大きな参考になるのだろうと、私は思っております。諸外国の比較ということを終わったら、今度は被害者側の実態をヒアリングしていきたいと考えています。

いずれにいたしましても、ヒアリングをしっかりとテンポよく行っていって、しかるべきタイミング、こういう時代の大きなウェーブが来ているわけですから、閣法、議員立法など、さまざまなプロセスを想定しながらしっかりと準備を進めていきたいと考えています。

【秀嶋】すでに第3 回までで、法務省、日弁連、最高裁からのヒアリングも終えて、次回台湾の再審法改正の話を伺い、さらに当事者の方の話を伺ってという流れで進められていく予定ですね。率直に立法化の時期についてはどのようにお考えでしょうか。

【柴山】通常国会は6 月に終わりますし、袴田事件の判決が9月に出るということも考えると、通常国会後、政局がどう展開していくかにも結構左右されて、そこはなかなか難しいのですけれども、当然われわれとしてはなるべく早いタイミングで、この問題について、しっかりとした成果を上げていきたいということは、皆さまにお誓いしたいと思います。

今後の日弁連の活動

【秀嶋】今後、日弁連としてどのような活動を展開していくかというところを鴨志田さんにお話しいただきたいと思います。

【鴨志田】2024年は再審法改正を目指す年ではなく、再審法改正を実現する年だと、本気でそう思っています。袴田事件の判決が、9月に言い渡される、その時が法改正に向けた世論の最大瞬間風速時点だと思うのです。逆に日本人というのは、のど元過ぎると何とやらで、急速に関心が薄れていく可能性もあります。80年代に袴田事件のような死刑えん罪が4 件、立て続けに再審無罪になった時でさえ、法改正が実現しなかったわけです。それから今に至るまで三十何年かかってしまっている。もしここで実現せず、また三十何年先ということになってしまったら、大崎事件の原口アヤ子さんは97歳ですから、もう間に合いません。私たちは法改正に向けたさまざまな活動をしていますが、それ以前に弁護人なのです。理不尽な目に遭っている人を何とか救いたい、そこを1丁目1番地としてスタートしてきたので、今年はその思いを結実させる年にしたいと、強く思っています。

そういう中で、今まさに超党派の議連が立ち上がり、活動をしていただいているので、この議連をバックアップするために、やれるだけのことは全部やろうと思っています。例えば国会議員に向けたロビイングをずっと続けて議連のメンバーが全国会議員の半分を越えれば、たぶん法改正ができるだろうと、単純な話ですがそう思います。

そして国会の動きを下支えすべく、地方議会が国会に対して再審法改正を求める意見書を採択しています。現時点で全国の264の地方自治体が意見書を採択していますが、これをさらに進めていく。全国津々浦々から再審法改正のうねりを作り上げていきたい。さまざまなイベントを開催したり、街宣活動を行ったり、直接に世論に訴えかけるような活動も必要です。

日弁連の全理事も再審法改正実現本部メンバーですから、各地の弁護士会の会長たちも本当に今、一生懸命頑張ってくださっています。この連休中も地元に帰って来た議員の所に要請に行った結果、議連の入会数が有意に増えたということもあって、こうしたことを地道に、でもスピーディーに進めていくということが重要だと思っています。

【秀嶋】国会の法務大臣とか首相の答弁では「在り方協議会の議論を見守りたい」というような発言もあるようですけれども、この点はどのように考えていますか。

【鴨志田】在り方協議会は、「ここでちゃんと議論している」というアリバイ作りのような形になってしまっています。法改正の必要性はある程度認めていて、だけど先延ばしにしたいというか、現状を変えたくないからああいう答弁になっていると思うんです。法務省だって、裁判所や検察だって、先ほど村山さんがおっしゃったように、本音のところではやっぱりルールが欲しいと思っているはずです。ここにどうやってアプローチしていくのかを考える必要もあると思います。

【秀嶋】本年3 月27日、静岡で袴田事件再審公判に合わせて、日弁連も街頭宣伝活動などを行いましたが、参加された村山さんはどのようなお気持ちで活動されていましたでしょうか。

【村山】1つは、私は「関わった者の責任」を果たすということです。要するに私は、袴田事件という事件に、しかも決定を出すという段階で関与しました。決定にも書いてあるのですけれども、大変理不尽なことが起きていました。極めて深刻な被害を知ってしまった者としては、これを社会に広めて正さなくていいのかという思いを強く持ちまして、それが弁護士になってからの再審法改正実現本部での活動の原点になっています。3月27日も私はそういう思いで、袴田事件の地元である静岡の方々に、1人でも多くの方に知っていただきたいし、現状をご理解いただきたい、そして一緒に法改正への道を支持していただきたい、そういう気持ちで活動をしました。

もう1つは、「時代の責任」です。議連の設立の会の時に、国会議員の先生方に申し上げたわけですけれども、刑訴法の再審規定は、大正刑訴からほとんどそのままなので、ちょうど100年ですね。戦後の刑事訴訟法改正からでも75年です。その間に1975年の白鳥決定があり、1980年代の死刑四再審無罪事件、本当はここで改正しなきゃいけなかったのに改正されなかった。今回ここで改正しないと、同じような大変な苦しみを背負う方が続きます。袴田事件で大変悲惨なことが起きていたことが明らかになってきている今こそ、法律を変えないと、また変わらずに終わってしまう、この時代にこの問題を知った者の責任として、現状を改革しなければいけない。特に国会議員の方は、この法律をこのままにしていいのかという、そういう気持ちで取り組んでいただきたいと思っています。私自身は今後も広報活動や法案作成などの点で、できることがあれば努力していきたいと思っています。特に、再審事件にはいろいろな事件があるから、条文を作って規制するのは難しいと法務省は盛んに言っていることには、しっかりと反論していきたいと思います。再審の理由がないことが容易にわかる事件もありますが、だからと言って、条文を作らないということにはならないのです。いろいろな事件があることを前提にして、そういうものも取り込んだ上できちんと規制していけるような条文を作ることはできるはずです。そして日本の再審制度がえん罪救済の最後の砦なのだと胸を張って言えるような法律改正を実現したいと思っています。

【秀嶋】「関わった者の責任」とは、本当に重いですね。3月27日は袴田事件の開始決定からちょうど10年だったと街頭でお話しされていましたが、心からの決意を込めておっしゃってくださったと思っています。




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