弁政連ニュース

〈座談会〉

日本の災害対策と法制度の課題(6/6)

令和6年能登半島地震に対して

【津久井】この座談会をいったん終えた後、令和6年1月1日に能登半島地震が発生しました。弁護士の支援は不可欠です。渕上さん、吉江さん、永野さんには、今後の弁護士の被災者支援と、政治に求められる課題について、ひとことお願いします(以下は各自の追加コメントとなります。)

【渕上】震度の大きさに加えて、半島という特殊な地形でライフラインの途絶による復旧復興の遅れが生じています。復興に向けた取組は緒についたばかりであり、地元の弁護士会で電話相談、避難所相談等を取り組んでいただいていますが、日弁連がこれをバックアップしていくことが必要です。立法事実を集めて日弁連の提言につなげていくべきでしょう。

【吉江】県中心部から離れた、高齢化した過疎地で被害が生じているという点で、東日本の状況に近いと考えます。地元弁護士会は既に精力的に活動しており、日弁連災害復興支援委員会は全力でバックアップするつもりです。東日本の総括ができていなかった、その反省が今回も活かされず、同じことを繰り返しているということを理解すべきです。今からでも、必要な制度の改正、運用の改善が政治には求められます。

【永野】今回輪島市や穴水町に入って感じたのは、やはりこの災害でも複雑になりすぎている今の公的支援制度の情報を被災者に寄り添ってわかりやすく伝えたり、一緒に考えてくれるようなソフトの支援がほとんどないこと。そして、公的支援の制度だけはあっても、実際に家の状態をみたり修理したり解体したりする業者自体も圧倒的に不足していることです。この2つが被災地の復興を大きく阻んでいます。国にできることは無数にあります。例えば、災害救助法の応急修理制度や応急仮設住宅について、制度をより複雑にし、使い勝手を悪くし、業者に敬遠され、職員の事務負担を増大させている根源の「現物支給」の原則を今すぐ改めて、シンプルな基準での「現金支給」の支援に変えてもらいたい。本来被災者、被災地を救うはずの公的支援制度が、災害の度に被災地、被災者を苦しめている現実をぜひ知ってもらいたいと思います。

(2023年12月27日実施)
※出席者の肩書は、座談会実施時のものです。



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