弁政連ニュース

〈座談会〉

日本の災害対策と法制度の課題(4/6)

災害ケースマネジメント

【津久井】キャッシュレス決済が当たり前の世の中になっていますから、地域クーポン・プリペイドカード方式は、すぐにでもやってほしい施策です。災害救助法が全く改正されず、あるいは自助努力に任せることになると、取り残される人たちが次々に出てきます。そこで災害ケースマネジメントを取り上げます。

【吉江】災害ケースマネジメントは、被災者に対して必要な支援をきちんと提供し、取りこぼしのないように支援する側がきちんと被災者のほうにアプローチをしてやっていきましょうというものです。内閣府の定義は、支援者が連携をして、被災者に対して必要な支援を、きちんと整理して、提供して、使ってもらうという意味合いで出していると思います。大事なポイントの一つは、いわゆるアウトリーチ型の動きを中心とすること。被災者が来るのを待たず、支援者の側から被災者のほうに出向いていってお話を聞くということ。二つ目は、支援者同士が、官も民も、ばらばらに活動するのではなくて、連携をして取り組んでいくということ。三つ目は、被災者一人ひとりを基準にするということですね。世帯だとか、地域だとか、それも大事だけれども、でも、やはり個々の被災者が、どう考え、どんな希望を持っているかをきちんと見ていきましょうということ。そこの三つを最低限押さえていれば、災害ケースマネジメントと言えるだろうと思います。

しかし、災害ケースマネジメントをやる地域とやらない地域があっては意味がない。被災者支援として必ずやっていってもらいたいことなので、最低限、被災者支援の体制づくりを全国各地でやっていかなきゃいけない。国が旗振りをしないとできないことです。制度化が必要なもう一つの理由はお金ですよね。活動のお金が必要です。事前の準備をするところから財政的な裏付けがなければ動けませんから、やっぱり制度化が必要だろうと思っています。

【津久井】令和5年5月に、中央防災会議の復興基本計画の中にも災害ケースマネジメントが盛り込まれましたが、計画に書き込んだだけでは画餅に帰するおそれもあります。静岡では、立て続く災害の中で災害ケースマネジメントを実践されていましたが、その実践例を紹介していただけないでしょうか。

【永野】静岡県弁護士会では、熱海の土石流のときも、あるいは令和4年の台風15号のときも、弁護士会として正式に災害ケース会議というものに参加していました。災害ケース会議というのは、大きな災害で設置されることが多い「地域支え合いセンター」の生活支援相談員さんたちが仮設住宅などを訪問していろんな課題を持ち帰った後に、みんなで会議をして、この人をどうやったら救えるんだろう、どういう制度を使ったらいいだろうということを議論するという場です。静岡県弁護士会は、そこに参加してみんなと一緒に知恵を絞ったり、あるいは相談員さんと一緒に戸別訪問をやったりしているのですが、現実にはこうした関与までしている弁護士会はほとんどないのが現状だと思います。日弁連としても災害ケースマネジメントをやりますと言うのであれば、今、吉江さんが言った通り、この弁護士会はできます、ここはできませんではなくて、どの地域でもある程度一律にできないといけないと思います。まず、簡単なところからでもいいので、例えば被災者の債務整理の支援とか、どの弁護士会でも、それならできるなと思えるような具体的な関与の形を日弁連として示すことが必要だと思います。

他方、国としてもこうした体制を現実のものにするには、絶対に予算措置が不可欠だと思います。災害ケースマネジメントをやってほしい。いろんな専門団体と連携して被災者の再建を支えましょうと言ったって、でも、お金は出しませんよと、ボランティアでどの組織、団体もやってくださいでは、なかなか現実には進んでいかないと思います。

【津久井】渕上さんに質問ですが、法テラスの「ケース会議支援制度」が試行されていますが、これを災害ケースマネジメントで展開されるケース会議への弁護士の参加に使えないでしょうか。

【渕上】総合法律支援法の改正を求める中で、日弁連の高齢者・障害者の委員会から、ケース会議に参加する費用の支援を求めており、それが、試行という形で実現しています。永野先生のお話を聞いていて、災害が起きたときに活用できるような横串を刺した取り組みが必要だと思いました。この制度はあくまでも試行ですが、災害復興支援につなげていただければと思っております。



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