弁政連ニュース

〈座談会〉

日本の災害対策と法制度の課題(2/6)

頻発する水害への対応

【津久井】最近は毎年のように水害が起きます。実際に起きている事実と報道などで接する情報との落差に驚くことが多いです。水害に対する施策が不十分だと言われます。日弁連は2023年12月14日に「応急仮設住宅の供与要件の見直しを求める意見書」1を出しました。

【吉江】現在、水害が発生して仮設住宅に入るためには、一定の評価以上の罹災(りさい)証明書が出ていなければならないという状態なのですが、実際、水害の現場を考えたときに、果たしてそれでいいのかが問題点の出発ですね。水害で、家に水が入ってしまって住めない状態になっているのですが、罹災証明書の発行を待ってから仮設住宅に入れるかが決まるということでは遅いわけです。少なくとも、水害に関しては、罹災証明書の有無にかかわらず、家が住めない状態になれば仮設住宅に入れるようにするという取り扱いの改正を求めて意見書を出しました。これは、2023年に水害に遭った秋田でも役立つ件です。現在、水が入って床がベコベコになってしまっていて住めないような状態であれば仮設に入れますよみたいなアナウンスをしているのですが、それは実態に合っていません。内水氾濫って汚水も含めた水が入るので、そこでそのまま住めないわけですよ。水でふやけたかなんてどうだってよくて、水が入ったという事実が大事なので、そこがちゃんと消毒されてきれいになって乾燥されて住めるような状態にならなきゃ住み直しできない。この意見書は、結構重要なものとして出しています。

【津久井】この意見書の起案に関わられた永野さん、ほかに指摘すべき点があればお願いします。

【永野】全国の水害被災地を見させていただく中でいつも思うのは、浸水被害を受けた人への住まいへの支援が圧倒的に不足しているということです。水害が起こると、避難指示の解除とともに避難所は閉められてしまうことが多いのです。住まいを奪われたあとの最後の砦になるはずの避難所が閉まっている。それが今の水害被災地の現状なのです。自治体は、例えば公営住宅を一時的に無償提供しますよというようなことをしますが、大体空いている公営住宅ってものすごく遠くて、子どもたちが学校にも通えなくなったり、病院に通えなくなったりとか、あるいは上の階しか空いていなくて、高齢者は、階段が上れないとか、ペット禁止だから行けないとか、ことごとくマッチングがうまくいかない。仮設住宅があるじゃないかと思われるかもしれませんが、仮設住宅って本当に変わった制度で、そもそも提供するかどうか自体、全て行政の裁量判断から始まってしまうのです。

これって同じ災害救助法の支援でも、例えば応急修理制度なんかは、必ず発災直後から周知が始まるのです。準半壊以上になったら幾らの支援が、修理補助を受けられますよと。でも、仮設住宅は裁量判断なので、いつまでたっても支援のメニューに挙がってこなくて、ほとんどの被災者には、存在すら知られない状態なのです。

ようやく仮設住宅を提供すると決まったとしても、何かと理由を付けられて、まだまだ被害が少なすぎると言われて利用を拒まれるのです。これは、行政全体の問題です。われわれが現地に入ると、被災者の人はみんな行く場所がなくて、特にアパートの1階で暮らしている人とか平屋の人の被害が一番大きいのですが、みんな車中泊していたり、泥だらけの家で泥だらけになりながら生活していたり、知人宅を転々としていたりという人が、もう大量にいることがわかりました。

だから、国としては、発災直後から応急修理制度と同じように、浸水とかで家を奪われた被災者には住まいの支援があるのですよというメニューをすぐに示してもらいたい。そして簡単な被害判定でまず入居要件を判断できるようにしてもらいたい。今の制度は、とても調査が複雑になっていますが、例えば目で見てすぐわかる床上浸水の被害を仮設住宅など住まい支援の条件にすればいい。実際、国の応急仮設住宅の使い勝手の悪さから、災害救助法の利用は早々に諦めて、床上浸水など住まいを奪われた人には直ちに住まいの支援をしますよと発災直後から動き出す自治体もでてきています。静岡県の磐田市なんかがその典型ですけれども、こういう心ある自治体が、被災者を救うために独自財源でやったような住居支援策に対して、後から国もちゃんと支援をしてもらいたいと思います。

【津久井】渕上さん、今のお話をお聞きになって感じられたことはあるでしょうか。

【渕上】東北弁連があった1週間後に秋田水害が起き、テレビ報道を見て驚いておりました。ただ、全国的なテレビ報道はそんなに続かないのです、水害って。だから、どんなに被災地の方々が困窮しているかを全国に伝えるかはマスコミの問題で、自分としてはその後を知りたいけれども、東京の人間には分からない、忘れられるということかなと思います。何カ月かして秋田弁護士会のもともとスタッフ弁護士等で社会福祉的な活動に従事された藤原美佐子先生に質問したところ、大変困窮している被害者がいるとのことでした。床の断熱材は、ぬれただけでもう機能を果たさないし、寒冷地では特に深刻なので、早い支援が必要なんじゃないかと思っていました。いわゆる罹災証明の判断基準の問題と思っていたら、罹災証明と切り離した仮設住宅の入居条件の問題だという日弁連の意見書が出たと聞いて、納得をいたしました。


1https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2023/231214_6.html



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