弁政連ニュース

〈座談会〉

SDGsにおける「気候危機」の現状と課題(6/6)

地域の再エネ循環がキーワード

【小西】まさに地域が一つの大きなキーワードですね。再生可能エネルギーの宝庫も地域です。今環境省も、脱炭素宣言をしている自治体を募っていて、800以上あります。2021年、地球温暖化対策推進法を改正して脱炭素化支援機構というのを作って、地域の省エネとか再生可能エネルギー特区を作って、いわばゾーニングをして、再エネ特区を作ってください、そこに対して、脱炭素化支援機構が地域銀行と一緒に支援をしていきますっていうのが、スタートするところです。だから、地域の再エネの活性化っていうのがすごく大きな、おっしゃるようにキーワードです。

【小島】今までのように、化石燃料で作られた電力やエネルギーを、どこかから買ってきて、その地域で使うということは、地域から富が外部に出てくることになります。だから、地域の経済的自立ないし経済循環という視点からは、地域のエネルギーの脱炭素化・再エネ化はそのことによって自分たちの中で富を回っていく仕組みにしていき、地域を活性化していくことでもあるのです。そのことを政治家の方とかに知っていただくといいと思っています。

【小西】そうですね。再エネっていうのは、地域にこそ、その富があるので、それを新たな地域の資源として生かしていく、そういう発想がすごくこれからは重要かなと思います。

【古平】地域における再生可能エネルギーに、企業は積極的に絡んでいるのでしょうか、それともまだ国が主導するにとどまるのでしょうか。

【小島】もちろん国の補助金とかね、いろんな交付金を利用するっていうのは重要です。

しかし、やっぱり最初のイニシアティブは、その地域に根ざした企業の動きが重要です。

脱炭素の関係で言うと、鳥取県の米子にローカルエナジーっていう鳥取県の西部地域をベースにした、地域新電力の会社があります。エネルギーの地産地消を目指していますが、元々は地元のケーブルテレビがベースです。熱心に取り組んでいて、自分たちで電力の需給調整までやっていますし、PPA(太陽光発電の設置コストを電力会社が負担し、場所を提供する人は負担なく太陽光発電が設置され、一定期間経過すると、場所提供者のものになるという仕組み)という方式を用いて遊休農地や屋根置きの太陽光発電を進めるなどしています。

他にも岡山県の真庭市でも、地域の木材製造工場の会社が中心になって、木質バイオマスという再生可能エネルギーを利用したまちおこしを進めています。

非常に意欲を持った企業人が地域のために何とかしようという人々と結びついて、地域おこしが進んでいるという感じがします。そういう動きと脱炭素の動きを結びつけていくと結構いいものが出来上がると思います。

【古平】地域での再エネ開発を進める主体として、地域新電力という言葉が出ましたが、新聞では、エネルギー価格の高騰で、地域新電力が苦境にたっているという報道がされています。その点どうなのでしょうか。

【小島】これは、2021年初めのエネルギー価格の高騰の時からはじまった問題です。新電力が、電力を市場から市場価格で調達する一方、需要家に売却する価格は、あらかじめ契約で決めた額なので、市場価格が高騰すると、新電力の経営が立ちゆかなくなるという問題です。したがって、問題は、地域新電力に限った問題でなく、新電力の多くに共通する問題です。実際、多くの新電力が、次の年度からの供給契約の締結をしないなどして、新電力の経営が危機に陥り、また、新電力から電力供給を受けていた企業が困っています。

日本では、再生可能エネルギーでも、固定価格買取制度のものは、市場に連動する仕組みとなっています。石油や天然ガスの価格が上がると、固定価格買取制度の再生可能エネルギーの料金も上がります。再生可能エネルギーは、燃料がかかりませんから、本来、石油や天然ガスの価格とは関係ないはずですが、そのような形となっています。その結果、市場を通じて、再生可能エネルギー電気を調達している地域新電力も経営危機に陥っているわけです。

この問題に対処する方法は、市場に影響されない、自分のところで発電する再生可能エネルギー発電を増やして、それを供給する電力の電源として活用するか、相対取引で、固定価格買取制度に縛られておらず、市場価格に連動しない電力を安く購入するかということになります。それで切り抜けつつあるところもあります。

本来的には、現在の電力市場の仕組みを変えていく必要がありますし、地域新電力が独自に調達できる再生可能エネルギー発電を増やしていく必要があります。

【古平】いろいろ課題はありますが、仕組みを工夫していくことで対応できるということですね。小西さん、日本はここから加速していくのでしょうか。

展望は開ける

【小西】ブレないでやれば、日本はその力があります。今は中途半端なんです。だから覚悟を決めて政策をうっていけば間に合うと思います。

カーボンプライシングは、今政府が進めようとしている課題です。今回、経産省がGXリーグという自主的に参加する取引制度を立ち上げます。議論の末、キャップアンドトレード型の排出枠取引制度を入れますということにもなりました。でも、今、自主的に始めるっていうのはあまりにも歩みが遅いです。ヨーロッパは2005年から始めています。思い切って進めていくべきですね。

【古平】本日は、貴重なお話、ありがとうございました。



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