弁政連ニュース
〈座談会〉
SDGsにおける「気候危機」の現状と課題(5/6)
日本で今の電力量の約2倍の電力を太陽光で作るのに
必要な太陽光パネルは国土の2%
【小西】今のお話には、アンモニア含めた革新的技術の開発の問題と、再生可能エネルギーの環境配慮とのバランスの二つの問題が混在しており、これは分けて考える必要があります。
まず革新的技術の開発は2050年に向けて必要ですが、それまではSBTとかでは90%ぐらいは自らの削減努力で削減、残り10%どうしても残ってしまうものに対しては、革新的技術を使う。特に大気中から直接除去するといった革新的技術の開発は必要ですが、その革新的技術の開発と2030年に向かって今石炭火力やめればすぐできる話のものと混同してはいけません。
あと後者の方は、例えば太陽光発電で山を切り開いてがけ崩れがあるじゃないかとか、風力発電建てると鳥がぶつかるとかがありますよね。当然、地元の環境をちゃんと優先して科学的にそれを測ってバランスを取っていくっていうのは必ず必要です。あちこちで矛盾が起きるっていうのはやっぱりきちっと環境配慮していないからです。ですので、その問題はまたどうやって環境バランスを取りながら再エネを増やしていくかっていう問題です。環境配慮をしながら再エネを入れてくってことは十分可能です。いつも皆さんに「日本中を太陽光パネルで埋め尽くすつもりか」とか言われますが、日本で今の電力量の大体2倍の電力を作るのに必要な太陽光と風力発電の敷地面積は、国土の何%ぐらいだと思いますか。大体太陽光2で風力を1の発電電力量にするとちょうど日本の需要に合うので、その割合で考えて、国土の何%を使うでしょうか。
【古平】30%ぐらい使わないと、全然賄えないっていうイメージなんですが。
【小西】太陽光パネルは、日本の国土の1〜2%です。
【古平】それで2倍賄える!
【小西】そうです。風力は4〜5%になります。風力は上(風車部分)が大きいですが、下はそんなに大きくなく農地もできます。でも上の大きさで考えても日本の国土の4〜5%、太陽光は1〜2%。しかもみんな勘違いしますが、太陽光は、平地である必要はない。なにか山を切り開いてそこにやる必要はなくって、ペロブスカイト(シリコン系太陽電池ではシリコンが厚く、曲げることができず、設置場所が制限されていたが、ペロブスカイトという結晶体を用いる太陽電池ならば、高い変換効率を維持したフィルムタイプ太陽電池の実現が可能で、ビルの壁面にもつけていくことが可能)とか、そういった新技術があって、ビルの壁面につけていくことができます。今、例えばJRとかが、鉄道の脇の土手とか線路脇の遊休地とかに太陽光を張ろうとしていて、100万kW、すなわち原発1基分ぐらいを目標としています。なので、すべて山を切り開いて作らなくていいのです。太陽光というのは騒音も臭いも何もないので、もう使うところのすぐそばにつけられます。コストが下がればいいわけですよね。経産省ですら2030年でkWh当たり7円になるって言っています。そういったペロブスカイトとか既にある技術など2030年に間に合う開発をして広めていけばいいです。だから実はできるんだけれども、日本では遅れた分、変な都市伝説が流布されています。それもときほぐしていく必要がすごくあります。
【古平】データに基づく話をしなければいけませんね。
【小西】そうです、データで考える必要があるんです。オックスフォード大学等も世界中で必要な電力を太陽光だけで賄った場合、国土の大体1〜2%と言っていますが日本ではなかなか広まらない。日本ではどうしても言葉の壁があるというのと、あともう一つは独立系の研究者が少ないので、そういった研究結果っていうのがなかなかお耳に入りにくいのですね。
【小島】農地なんか耕作放棄地とかそういうところも可能だし、どうしても農業をやるというのだったら平面じゃなくて縦型の太陽光発電もありますね。
【小西】そうですね。あと駐車場や道路とかにもやるような技術も今できてきています。ですので、逆に言えば、これは小型革新原発の開発より遥かに身近な開発です。
【小島】コストも安いし、確実に実現できる技術ですよね。
【小西】しかも、ここに日本の技術力を投入していけば、日本企業は、太陽光も風力も最初は世界の最先端いっていたのに、今は日本以外のメーカーにほぼ取られている状態じゃないですか。ですので、ペロブスカイトとか、日本がすごく可能性がある技術なので、日本企業が力を入れていくのがパリ協定時代の競争力に繋がると思いますね。
【小島】確かにあの技術は日本の中のビルにも使えるし、途上国のビルとか、その熱帯のビルなんかあれで相当発電できます。
【小西】今回私もエジプトに行って思いましたけど、これだけ砂漠があれば、日本みたいな環境バランスとかいう問題はあまりないのだろうなと。インド等も太陽光は本当に彼らにとっては安くできるでしょう。
【小島】すごく安いみたいです。だからああいう太陽光の安いところで水素作って、その水素を世界が使うというのはあり得る選択肢です。
【小西】アラブとか計画していますよね。
【小島】だから石油が駄目になったらばその砂漠を利用して、太陽光で水素を作ってそれを各国が使うと。
【小西】それもいいですし、日本も結局その電力を2倍作るのに国土の1〜2%でしょ。それぐらい作ったら50%は使わない電力になる、それが必要です。なぜならば、電気の需要は刻一刻と変わります。その電気の需要と供給を合わせようと思ったら、大量に作るっていうのは一つの解なんです。全部再生可能エネルギーで賄えると、使ってない電力というのはもはや値段がつかないような電力になるので、この電力で水の電気分解をすれば国産水素ができます。
だから、別にその水素を海外に頼る必要もなく、国産で値のつかない電気を使って作るという計画を立てれば十分できます。
【小島】要するに余剰電力の活用ということです。
【小西】今だって既に九州電力とかでかなり出力抑制が起きています。出力抑制はこれからもっと増えていくので、その余剰電力の有効利用をどうするか。それは余剰の再生可能エネルギーで作る水素が一つの大きな解です。
【小島】九州電力もそうですし、九州・四国・中国電力の3エリアで再生可能エネルギーの発電量が土休日には100%を上回ることがあります。その結果、中国電力など原発を動かしていないところでは、市場での電力料金がゼロになる。だから、その3地域は今でさえ再生可能エネルギーで相当の供給ができている。もちろん冬場の電気をどうするかとか、風力もある程度バランスよく開発しなきゃいけないということはありますが、ポテンシャルは十分あって、今むしろ問題になっているのは、これ以上電力、再生可能エネルギーを増やしても、それを吸収する送電のネットワークがないのでどうするのだというところで、今できるのに止めているのです。だから再生可能エネルギーが作れないっていうよりは、作れるのに、できない状態になっています。だからそういうネットワークや変動に対応できる体制の整備とかをきちっとやっていければ、相当できると思います。やっぱり再生可能エネルギーを増やすために、国策のいろんなシステムを動員するってことをちゃんとやっていればいけたはずですが、そこのところの整備が遅れてしまったっていうのが、大変大きいですね。
【古平】先日青森の鯵ヶ沢に行く機会がありまして、風力発電が沢山立っており、タクシーの運転手さんから、この町は風力発電で相当賄っていると聞きました。
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