弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

日弁連の国際戦略 Ⅱ
国際司法支援、国際人権への取組(3/5)

弁護士が国際司法支援に関わることの意義

【伊藤】弁護士が国際司法支援に関わることの意義はどのようなところにあると感じますか。

【磯井】資格があって、民間の立場で、フレキシブルに対応できることが多いと思います。専門分野も多岐にわたっているので、様々なニーズに応えられます。また、弁護士は、司法制度の担い手であると同時に利用者でもあります。いろいろな視点から制度を見て様々なアドバイスができる立場にいると思います。

【伊藤】JICAを中心とした支援の中に弁護士が入る形での支援を中心に伺ってきましたが、弁護士会独自の支援が意義を持つこともありますか。

【外山】資金的にも人材的にもODAは政府が行うのが中心なのは当然ですが、特に司法支援について申し上げますと、最終的に司法制度というのは、国民に利用されないと意味がありません。それを司法アクセスといいますが、司法アクセスの分野については、どうしても民間、特に国民と司法とを繋ぐことを仕事にしている弁護士の手による支援が重要になると思います。

それとODAは政府間の合意がないと始められません。現地には本当はニーズがあるケースでも、現地側の政権の安定度などが問題となって、ODAでは支援を始められないなどの制約があります。その場合には民間団体の力を使っていただくことが重要になるケースがあると思います。

そういうことから、日弁連の力というのはそれほど大きなものではありませんが、先ほど申し上げたラオスのように、JICAの支援が正面から行われていない中で、日弁連が補うような形で支援する意義があると思います。

国際司法支援の現場で感じる課題

【伊藤】支援の現場で感じるご苦労はありますか。

【磯井】法整備支援は、磯井他のODAプロジェクトと違って、首都でやる活動が中心なので、過酷な生活環境におかれることは少ないですが、国によっては頻繁に停電があったり、食事など生活面での不自由もあります。

それから特に国際司法支援で苦労するのは、法案作りにしても人材育成にしても、外国語の言葉の壁がある中で、質の高い通訳、翻訳を確保するのは大変です。

また社会の背景が違っているので、似たような概念を想定して話していても、実は全然かみあっていないこともあります。これは最終的には法整備支援の面白さでもありますが。

【伊藤】具体的に支援をしていく中で感じている問題意識はありますか。

【磯井】日本が支援をしているのは、大陸法系・成文法系の国が多くて、現場では信頼を得ているのですが、国際的な発信が少し弱い面はあると思います。国際的に発信・議論するには、英語に乗せていかなければなりませんが、英語圏は法体系も違いますので、うまく議論がかみ合うような発信を工夫しなければなりません。

日本の支援は、現場の実務家と一緒に議論して、現場の実務を変える活動を地道にやっていると思います。それは他の国や国際機関の支援と比べても、売りと言えますが、一つ一つの活動はかなり地味で時間がかかるので、アピールは重要だと思います。

【外山】日弁連が行う支援活動というのは、これまで基本的にはボランティアベースで行われてきていて、渡航にかかる実費だけをJICAからの資金でいただけたり、あるいは日弁連から出すのですけど、活動に対してのペイはしないということをベースにしてきています。日弁連は、国際司法支援活動について2009年に基本方針を定めているのですけど、国際司法支援活動というものは、ただ言われたことを業務としてやればいいということではなく、この基本方針にもあるように、現地に法の支配を根付かせて、司法アクセスを変えるのだという情熱や理念を持っていないとなかなかうまくいかないので、そういう気持ちを持ち続ける人がやっているという意味ではボランティアベースはいいと思います。ただ、だんだんと規模が大きくなり、今後も大きくしていくという局面では、ボランティアベースではなかなか続いていかないのだろうということも思っていて、今申し上げましたような情熱とか理念を維持しつつ、少しは費やした時間に金銭的に報いる仕組みなり、資金を確保していくというのが次のフェイズの大きな課題だと思います。



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