弁政連ニュース

〈座談会〉

被災地の声を国会に
~弁護士による政策提言~

(6/6)

【岡本】お話しいただいた三つのテーマ以外にも日弁連では多くの立法活動を行っています。最後に今後更にどのような課題がありそうかという点と、復興分野だけではなく他の分野でどうやったら弁護士を活かせるのか、メッセージなどがありましたらぜひどうぞ。

【杉岡】今、岡本先生が仰った「データとして見えるようにする」というお話はものすごく大事な話だと思います。あとはどんな人がこういう理由で困っているんだということを具体的にきちんと伝えていくのも大事かなと思いました。例えば二重ローン問題の18%という数字は非常に大きいと思うんですけど、実際の相談票を見て一番心を衝かれたのは、家を買って3時間後に流されたという方でした。しかも引き渡しが終わっておらず住んでもいなかったので、生活再建支援金の支給すら無いという記載を見た時には言葉を失いました。そのほかにも院内集会などで当事者の方々にお越しいただいて実際の声を伝えていただくこともあるんですけど、一番は数字、次に大切なのは現実に困っている人がいるということを具体的に伝えていくのが大切なんだなと思いました。震災からもう3年以上が経過して、報道も減ってきていますし人々の関心が薄れてきていることをひしひしと感じます。ただ去年の12月11日に復興庁から公表された数字でも、全国の避難者の数は21万6,762人います。福島県の方が多いのですが、岩手県でも3万人、宮城県では7万人以上の方が今でも避難生活を送っています。生活再建ができていない方がこれだけいるということは、やはり多くの方々に知ってほしいと思います。これからどんどん関心が薄れていく中で立法提言活動は難しくなっていくと思うんですけど、次の災害のことを考えるとここからが勝負かなと思います。引き続き頑張って活動していきたいと思います。

【亀山】今回の件で大事だなと思ったのは、「現地の人が声を出す」ということです。私の場合は現地の人の相談を聞いて発信したわけなんですけど、やはり東京大阪の弁護士と被災地の弁護士が言うのでは違いますので、現地の人がきちんと意見を言っていくのが重要なんだなと思いました。そういうように言っていけばマスコミにも取り上げられやすいですし説得力もある。あとは取り上げてもらいやすい時に言うタイミングというのも重要なのかなと思います。今後の課題としては、災害弔慰金のことは災害関連死の方でも問題があります。その辺りを含めて今後も被災地の弁護士会と協力しながら被災者の方を忘れずに活動していきたいなと思っています。

【小口】被災地の方の声を受け止める弁護士が必要で、その声をそこで留めるのではなく報道関係に流すというのも大切なんだと思います。立法への影響もそうなんですけど、報道関係に乗ると相談の件数も増えるんです。さっきの相続に関する相談が増えてきたのもみんなが知ってきたからではなく、何やら噂になって盛り上がっているし、新聞やニュースでも取り上げられているぞということになっているから、みんな気になっていたんだと思います。報道のベースに乗せて件数を増やし、先ほど岡本先生がおっしゃったようにきちんとした形に集計して統計的に見る。それを持って立法活動を行っていき省庁や国会議員の先生方に声を上げていくというステップが重要なのではないでしょうか。今後の課題としては一つ原発の問題があると思うのですが、ひとまずそれは横に置いておくとしてほかにも現在進行形の課題が多くあります。一つは災害関連死の関係で裁判もいろいろ起きていますがこの問題は全く終わっていませんし、この問題だけは今からでもやり直すことができる問題です。多分私が一番詳しいので国会議員の先生方はいつでも呼んでいただければどこへでも意見や情報をお話に行きますので呼んでいただければと思います。あと現在進行形の問題と言いますと平成28年の3月で仮設住宅の期限が切れます。そろそろ被災者の方も気になりだしている頃です。これは福島、宮城、岩手のすべてなのですが現在の法制度では平成28年3月までしか仮設住宅にはいられませんよという法制度になっておりまして、これがここから先1年間の最大の課題だろうと思っています。そして将来に向けて二重ローン問題に関してはここで立法化しておかないと本当に大変になると私は思っています。次に考えられている大きな災害と言えば「首都直下」と「南海トラフ」です。このまま二重ローン問題が大量に発生すると大変なことになります。震災から4年も経ったんですから、立法化に向けて動き出すタイミングは来ているんだろうと思います。

最近、特に重要だと思っているのは、弁護士が相談内容を集めて立法事実にするのはもちろん重要ですが、やはり弁護士だけでは限界があるので市民の団体やNPOなどのさまざまな人たちと連携して立法事実を集め、当事者の人々と連携して立法化に向けて活動していくことです。阪神淡路大震災から20年経ち、NPOなどのいろいろな市民団体が育っていっている部分がありますから、連携しながら立法事実を積み上げていく。弁護士もその一助になる形で立法提言をしていく。あるいは必要に応じた裁判もしていく。そのような連携が必要だと思います。

於霞が関弁護士会館

(平成27年1月26日 於霞が関弁護士会館)


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