弁政連ニュース
クローズアップ〈座談会〉
利用者目線で改革を
「民事司法を利用しやすくする懇談会」の最終報告を受けて (1/6)
「民事司法を利用しやすくする懇談会」の最終報告を受けて (1/6)

高橋 宏志 氏
中央大学法科大学院教授
同懇談会・民事家事商事部会部会長

安岡 崇志 氏
元日本経済新聞論説委員
日本司法支援センター理事
同懇談会・基盤整備アクセス費用部会 部会長

山根 香織 氏
主婦連合会会長
同懇談会・消費者部会部会長

斎藤 義房
本部副理事長兼広報委員長
司会担当
【斎藤】 本日は、昨年の10月30日に発表された"民事司法を利用しやすくする懇談会"の最終報告書の内容をご紹介するとともに、広くご理解いただくという目的から座談会を行いたいと思います。進行は広報委員長であり、この懇談会の委員でもありました斎藤が務めさせていただきます。
まず冒頭に、この懇談会が発足した経緯についてお話いたします。2002年に司法制度改革推進計画が閣議決定されて11 年が経過いたしました。しかし民事司法の分野では、労働審判制度の導入、知財高裁の設置などが実現したものの、改革の成果が市民に広く実感できるものになっておりません。弁護士人口は2002 年から10年で70%増加したのに、全国の地裁の民事通常訴訟の新受件数は過払い金事件を除くと、2005年以降年間約9万件で横ばい状況にあります。国際的に見ると、我が国の民事訴訟件数は極めて少なく、人口比でアメリカの約8分の1 、フランス・イギリスの約4分の1 、ドイツ・韓国の約3分の1 にとどまります。簡裁の特定調停を除いた民事調停も2002年の約7万件から2011年は約5万件に減少しています。各種のADRも原紛センター以外の利用件数は極めて少ない。我が国の民事紛争自体が少ないのであれば、あえて問題にすることはありませんが、全国の消費生活センターには年間約88万件の相談があり、労働基準局には年間約100 万件の相談が、総務省の行政相談にも年間約18万件の相談があります。結局、我が国の現状は、多くの権利・人権侵害が泣き寝入りか法的手続によらない解決で終わっている状況にあるといえると思います。我が国の民事司法制度の利用が伸びない原因はどこにあるのか。利用者の目線で分析・検討する必要があるのではないかということで、昨年1月、経済団体、労働団体、消費者団体、研究者、マスコミ関係者、弁護士が結集してこの懇談会を発足させたのが経過です。それでは、本日ご出席の方々の自己紹介と、懇談会に参加された動機・理由からお話いただければと思います。
【高橋】 高橋宏志と申します。大学及び法科大学院で40年近く民事訴訟法の教師・研究者をしております。知人の弁護士から「今度こういう懇談会をつくるので参加してほしい」というお話があり、それが契機となり民事司法懇に参加させていただきました。実際に参加すると、日弁連が出していたグランドデザインとは独立して、かなり突っ込んだ議論をいたしまして私自身も大いに勉強になりました。お誘いには感謝している次第であります。
【安岡】 2011年の4月から法テラスの非常勤理事を務めております安岡崇志と申します。その1か月前の2月末までは、日本経済新聞で30年間、新聞編集に携わっていました。定年までの最後の7年間は司法問題を担当する論説委員として、実施段階に移った司法制度改革の課題を社説やコラムに書きまして、この懇談会で取り上げた諸問題についても関心を持っていました。法テラスは、市民が司法サービスを利用するためのアクセスを改善する仕事をしています。司法制度改革で扶助制度国費化、法テラス・コールセンターや全国にある法テラス地方事務所・支部での法律関係の情報提供など一定の前進をみましたが、相変わらず司法アクセスは抜本的には改善されていないという問題意識を持っていました。そんなときに日弁連からこの組織立ち上げのご紹介があり、参加させていただきました。最終報告書についてはなるべく利用者側・一般市民側からの提言の色彩が濃い文書になるようにいろいろな意見を申し上げました。
【山根】 主婦連合会の山根香織です。主婦連合会は戦後混乱期の物もない厳しい時代になんとかして暮らしをよくしたいということで立ち上がった主婦たちによって発足され、今年で66年になります。あらゆる生活の場で安心・安全な暮らしを目指すという運動方針で、幅広い課題を消費者問題として提起し、暮らしの中から消費者の声を国や行政、企業へ届ける活動を続けています。
司法制度改革では、司法を国民にとって身近なものにすることによって、一人一人の権利が守られ救済されてより良い社会が構築されることが期待されましたけれども、なかなか問題の解決や改善、救済が進んできたという実感を持つには至っていない、もっと民事司法が国民一人一人の身近にあって利用しやすく、頼りがいのあるものにしなければならない。そのためになんとか動いていく必要があるというお話に共感しました。大変専門的で難しい会議だと思われましたし実際にそうだったのですが、消費者として参加させていただきました。

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