弁政連ニュース

特集〈座談会〉

LGBT
―今こそ性別平等の立法課題の解決を(3/6)

教育・学校・子どもに関する政治課題

【本多】次に、子どもたちの問題に移ります。最初に遠藤さんからにじーずに来る子どもたちについてお願いします。

【遠藤】にじーずに来る子の半数は18歳以下ですが、家の中でも学校でも自分の本当のことを言えないという話が毎回出ます。家族に言えないということは、自分がLGBTであることを親に知られたら、親から何と言われるかわからないという不安な気持ちを抱えているわけです。にじーずに参加することも家族には秘密なので、友達と遊んでくるとか、図書館に行くと嘘をつきながら参加して、そのことに苦しんでいる状況です。不登校の子も多いですし、制服がない学校を選んだ結果として通信制の学校に行く高校生も多いです。

親に理解があって子どもを連れて来て、親が必死に応援しているけれども学校がわかってくれないというケースもあります。

【本多】学校については、文科省初等中等教育局児童生徒課長名義の『性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細やかな対応の実施等について』という通知(2015年)があります。この点も含めて学校に望むことはありますか。

【遠藤】この5年ぐらいでだいぶ教職員の意識が変わってきたように感じます。

例えば、制服についても、柔軟に対応できる学校が増えてきて、男がズボン、女がスカートではなくそれぞれが好きなものを選べるようにしようという動きもあります。

課題としては、教職員の意識がばらけていて、教職員研修を受けたことがある人とない人で全然考えていることが違います。例えば、生徒から制服のことで相談を受けた際に、柔軟に対応できる学校と対応できない学校があります。制服を着られないことで1人だけ別室で対応された例もあるので、教職員研修をきちんと行うことが重要です。

学習指導要領の問題もあります。最近は国語や現代社会や道徳の教科書で少しずつLGBTのことを扱っていますが、保健体育ではいまだに「思春期になると異性への関心が高まる」と教科書にあります。そのように学習指導要領に書かれていることが原因です。異性愛しか伝えないということは、その他が重要ではない存在というメッセージになってしまうので、見直しが必要です。

【本多】こういう研修が効果的だという研修はありますか。

【遠藤】できれば職場ごとに研修をした方がいいと思います。というのは、一つの学校でも、例えば養護教諭はたくさんカミングアウトされたことがあって、教頭先生は一度もカミングアウトされたことがないというように全然見ているものが違います。カミングアウトされたことがある先生は、男女別の髪型で男子は短くしろというのが不登校の原因になっていることを認識し、重大なものとして認識していますが、カミングアウトされたことがない先生は単に「わがまま」と捉えてしまうことがあります。職員室の中で話す機会がないと、そういう障壁がなかなか変わらないと思います。

【本多】校長の裁量に任せていいかという点はどうですか。

【遠藤】制服の問題は校長に委ねられている部分が多くて、校長の理解があれば柔軟に対応できますが、校長に理解も意欲もない場合には、全然変わりません。実際にはトランスジェンダーの子どもが不登校になる原因としてかなり重大な問題であるにも関わらず、学校によって対応がばらけています。ですから、特に制服については、校長任せではなくて、文科省から指針を出すといいと思います。

にじーずの子たちから聞くのは、制服が選択制でも選べるのは女子だけで男子はズボンしか選べないという不均衡が生じはじめているということです。性の多様性が尊重されているのではなく、女だからズボンも認めてやっていると言われているようで、結局自分を男性として扱ってくれるわけではないのだと失望している生徒の話を聞きます。トランス女性の生徒が男子扱いされ、ズボン制服をあてがわれる一方で女子はどちらも選ぶことができて、その非対称性がなおさら屈辱的だったという話も聞きます。制度として選べるようになっても、実際にはズボンの値段が高すぎて親が「スカートでいいだろう」と買ってくれず、2万円のスラックスを中学生がお年玉をくずして買っただとか、せっかく学校が努力をしても制服を売っている店に行くと「お嬢さんはこちらですね」とスカートに誘導されるという話もあります。本当に選択肢を保障するためには生徒や保護者、地域に対する情報発信をどうしたらいいかも考えていく必要があります。それは校長任せではなくて、文科省が良い事例をきちんとまとめて伝えられるといいと思います。

【須田】学校の現場は、子どもたちに対して多様性を尊重しようと言うだけで、教職員の中にも当事者がいるということがすっぽり抜け落ちているような気がします。そこは、教職員の中にも当事者がいるという前提で組み立てる必要があると思います。

【内藤】おっしゃる通りです。今回の労働施策総合推進法のパワハラ規定は、地方公務員の職場にも適用されます。ですから公立学校も同法のパワハラ対策をしなくてはいけないので、教育委員会が事業主として対策していくことになります。そうすると、学校では職場と教育現場が重なって、先生が自分たちの間でもSOGIハラを予防していこうという認識が高まるので、子どもに対しても同じ意識を持てるようになると思います。

ただ、労働施策総合推進法を教育現場に活かす上では、法律ができたけど、それが徹底されていないという問題もあります。文科省の調査によると、特に市区町村の教育委員会で法が求めるパワハラ措置が実施されていません(令和2年度公立学校教職員の人事行政状況調査)。国が履行のための監督やフォローをしっかりしていく必要があると思います。議員の皆さんにも注目いただきたいと思います。



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