弁政連ニュース

特集〈座談会〉

地方議会の弁護士たち
~弁護士が地方議会に進出する意義~(4/6)

【安藤】弁護士の知識や経験が、議員活動をしている中で役立った場面があれば、具体的にお話を頂きたいです。逆に弁護士であることがマイナスに働いた場面があればそれも併せて教えてください。

【有近】やっぱり田舎なので女性で若いというだけで「頼りない」と思われる方は年配の方にいると思います。肌感覚ですが、私が弁護士でなかったら私は選ばれてなかったなと思います。そういう意味で弁護士であることは役に立っています。弁護士の知識や経験がということですが、私は弁護士四年目で議員になったのでそれほどの経験はありません。ただ弁護士会の仲間、先輩たちが政策立案の中で非常に力を貸してくださいます。今こういうことをこの委員会では問題視している、こういう課題があってこういう政策立案をしていきたいんだと皆さんがレクチャーしてくれるので、それを政策につなげていけるように私も動いています。弁護士の自分がというより、弁護士の仲間が全国に沢山いて応援してくれていることが、議員活動に非常に役立っています。感謝の気持ちでいっぱいです。

【山田】横浜市の行動が、公権力の行使ということで憲法との兼ね合いが議題になることが多く、私は当然会派の中で弁護士であることは知られていますので、そういった取りまとめを依頼されることがあります。例えば最近だと横浜市パートナーシップ制度ですね。行政が導入をしたのですけど、そういう話が出た時にかなり執行部の方から「ちょっと山田の方で法律的な議論とか憲法との兼ね合いをとりまとめろ」ということで、1年目なんですけど、法律家の立場で報告をして横浜市の意図とか全国的な流れであるとか憲法との兼ね合いであるとかを説明する場面が結構多いんです。ですから司法試験以来、一番憲法の教科書を調べたりしています。自分があまり想像しなかったところなので面白いなと思います。そういったところで、今までのキャリアも役に立っているのかなと思っています。マイナスがあるとすれば、皆さんもそうかもしれませんけど、条例の建付けとかで気になるとかなり細かく突っ込んでしまうので、もしかしたら行政の方から「あいつ1年目のくせに小うるさいな」と思われているかもしれません(笑)。

【小川】先ほど有近さんがおっしゃっていましたが、私も弁護士というだけで市民の方は信頼してくださっているな、ということを感じています。だからこそしっかりしないと弁護士会の先生方に迷惑をかけてしまうというプレッシャーも感じています。いろんな方々が候補者に並ぶ中で、弁護士記章を持っているだけで、この人はちゃんとしているのだなと見てもらえますし、市民・県民からの期待は大きいと思います。議会の中では山田さんがおっしゃった通り、条例や規則のことで何かあると「おい弁護士、どうなんだ」と他の先生達も聞いてくることがあって、法律の専門家としてアドバイスすることもありますし、一般質問で知事や部長と議場でやり取りをするときには法廷の尋問の経験が役に立っていると感じます。何も知らないまま議会に入って議場で質問するとなるとすごく緊張すると思いますが、法廷の尋問経験があったので最初から突っ込んだ質問をすることができました。突っ込み過ぎて怒られたくらいです。尋問技術や何を獲得目標にして質問しようかと考えられるところは弁護士としての経験が活きています。あとはセクハラの被害にあいにくいということもあります。議会でもセクハラの問題はありますが、男性の議員も職員さんも「訴えられるからお前にはセクハラをしないようにしよう」と気を付けてくれるので。マイナス面は、人によっては弁護士で議員というと偉そうなエリートと思われてしまうので、なるべく気さくで親しみやすいようなキャラクターを常に心がけています。

注力している政策

【安藤】皆さまが注力をしている政策は何でしょうか。その課題、あるいはその課題達成に向けて目指していく方向性についてお話を頂きたいと思います。

【有近】有近弁護士としては、被害者支援条例、児童相談所への弁護士配置、民間DVシェルターへの支援、LGBTへの理解促進等があります。個人的には、伯父が志半ばで亡くなりその遺志を継いで政治家になった経緯がありますので、彼がやり残したことをやりたいと思っていまして、まず分かっているのがインフラ整備とコンパクトシティです。高度経済成長期に建設されたインフラの多くが今更新時期を迎える一方、地方は自治体の財政がひっ迫しておりまして、これからのインフラ整備には効率性の観点と地域活性化の観点が欠かせないと思います。何でも作ればええというインフラ整備ではなくて住民が何を求めているのかという視点で無駄にならない真に必要なインフラ整備、投資を広域的計画的にしていかなければならないなと思います。赤字のことは民間はやりませんから、行政にしかできない非常に重要なこととして私が取組んでいきたいことです。コンパクトシティは、全国で次々に新しい取組みがなされていますが、私としては、ご縁がつながって出会った、ごちゃまぜのまちづくりという取組みに注力しています。これは、地方にもともとある街並みや歴史を大切に活かし、空き家をリノベーションして地域の高齢者、障がい者、子ども、子育て世代、誰もが居場所と役割を持てる場所として再生し、既存のまちを再生していく取組みです。人と人との交流や役割を持ってもらうことが、人々を幸せにし、地方を元気に自立させると考えているので、ぜひ山口県でも実現したいと思っています。

【山田】具体的な政策では、オレンジリボン、児童虐待等に関する取組みは個人的に注力をしているところです。横浜市もコロナ禍で学校が休校になったのですけど、やはり家庭内ストレスの高まりが懸念されていたんです。そこで私が党内で提言をして採用されて、いま横浜市に提言をしているのがLINE相談ですね。そういったものが一つひとつ実現しつつあるのかな、というようなところです。あとは大きなところでいうと、世襲がいいのか悪いのかというのは議論があるのですけど、ただやはり地域の思いとか願いというのがあって、それは誰かがバトンを受け継いでちゃんと次の時代に繋げなければならないと思います。例えば祖父の時代にかなり議論した横浜国際競技場というサッカー競技場の地下の遊水地が台風ですごく効果を発揮して地元の浸水被害が防がれたということがありました。こういったことを聞くと、今やっている議論が20年後、30年後に大きな意味を持つんだな、と感じます。そこに関わった人の名前なんかも出てこないし、忘れられるのですけど、名前も残らないけど確かに誰かの命を救ったり、そういう仕事がやっぱりあるのだなと思うんです。自分も大きなところではそういう仕事をしたいなという思いでいます。

【小川】一番力を入れているのは人権の関係です。児童虐待やDVの被害者支援については毎回質問で取り上げ、児童相談所の一時保護所の増設や児童福祉士の増員を実現することができました。DVの関係だと女性相談所の婦人相談員の処遇改善はずっと言い続けていて、2020年度から会計年度任用職員制度になって少し手当も付くようになりましたが、まだ十分とは言えないので引き続き取り組んでいきたいと思います。犯罪被害者の支援条例については弁護士会と連携をしながら進めておりまして、2018年には県警と行政の担当部署と弁護士会とで合同の勉強会を開催し、2020年の条例制定に結びつきました。人権にかかわること、弁護士会と連携できることについては引き続き力を入れてやっていきたいです。それ以外には農業が重要だと思っておりまして、実家がコメ農家ということもありますが、農業政策については国も地方もしっかりやっていかないと、10年後、20年後の食料の安定供給も危ういのではないかと思っています。群馬県の広大な自然環境を有効活用して、農業の生産性を上げていきたい、学校給食の県産食材の利用率ももっと上げていきたいと思います。農業政策を基軸にした循環型の地域づくりに今後は取り組んでいきたいと考えています。



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