弁政連ニュース

特集〈座談会〉

地方議会の弁護士たち
~弁護士が地方議会に進出する意義~(3/6)

【安藤】ありがとうございます。ちなみに子育て中ということですけれど、議員の産休・育休についてはどうお考えですか。

【有近】制度が整えばより女性が参加しやすくなるので、そういう制度はきちんと整えていくべきだと思います。私は体育会系なので弁護士をしながら出産直前、直後も働いていましたし、議員としても女性はこれだからと思われたくないので意地でも休まずにやってしまいそうですけど、それだと私のようなめちゃくちゃな女性しか政治に参画できなくなってしまうので、普通の人が、本当に良識のある女性が参加できるように環境整備が必要だと思います。育児しながらの政治活動は、本当に大変なので。

【山田】個人的にはかなり職住接近である一方、議会がない時は自由に時間が設定できるので、やりようかな、と思っているところです。例えば、夕方に会合が6時から始まるんだという時は地元なので4時半、5時にちょっと帰って家事をやってから出ていくとか、家族とコミュニケーションを取ってから出ていくとか、弁護士も自由業で議員も自由業なところがありますので、いくらでも会合が入りますし、いくらでも予定は入れられるのですけど、あまり言い訳にし過ぎずに公私の予定のバランスを取っていければいいのかなと。忙しいですけど「0:100」の問題ではないのかなと思います。その意味で、議員育休で公務を休むというのはもう少し個人の努力、マネジメントでうまく出来るのではないかなという意見もありますね。ただ、議員が育休を取ることによって社会への発信になるという部分もありますので、その辺りはバランスを、と思っています。

地方議員のやりがい

【安藤】ありがとうございます。続きまして、地方議員になって感じるやりがいや、一方でご自身が感じる課題などについてお話を伺いたいと思います。

【小川】小川議会というところに入って視野が広がったと感じています。といっても弁護士業も3年くらいしかやっていなくて、弁護士もひよっこの段階でこちらに入ってしまったので当然なのですが、法律事務所で関わる部分以外にもこんなに問題があるんだなと、予算の問題や経済のことなど今までになかった視点で勉強できるのは自分にとってはありがたいと思っています。これまで取り組んできたDVの被害者支援や貧困の問題に加えて、今は障害者や外国人の人権問題にも取り組んでいます。課題については、群馬県議会は50人議員がいますが、その7割が自民党・公明党所属議員で占められているので、私たちのような野党系の少数会派は多数決では絶対に勝てない。委員長・副委員長ポストも絶対に取れない構造になっているので、1期目、2期目の時は自分のやりたいことが通らなかったり多数決で負けることにすごくストレスもありました。3期目からは本当に通したい政策は他の会派と一緒に取り組もうとか自民党さんから議案としてあげてもらおうとか、他会派との交渉もだんだんとできるようになってきたので、さらにやりがいを感じているところです。

【有近】とても勉強になります。私は1期目なのですが、人と会うのが好きで、多くの人から直接話を聞いて課題に直面して行政と調整して課題解決を図るというのが本当に面白いなと思います。弁護士の時は依頼者の利益は何かという視点で事が起こった後に事後的に紛争解決する。相手方は民間の一般人である事が多かったのですけど。議員になるともっと多くの人の利益は何か、何が全体のためになるかという視点で、相手方は基本的に行政で、制度や仕組みができれば多くの人の事前の救済にもつながると感じています。課題としては何が全体のためになるのかというところについて様々な議論があることだと思います。議論をするときに自分の主張の根拠・拠り所になるのは何といっても自分の脚で回って聞いたみんなの声、声の数なのではと思います。現場の声、今皆が何に困って何を求めているのかを自分の耳で聞く。弁護士は今ある法律や判例を理屈にするしかないのですけど、議員はみんなの声、数の力が理屈になるのですよね。面白いことに。法律や判例はほとんど変わらないことで安定感があってそれは良いところだと思いますけど、みんなの声は、社会経済情勢を反映してどんどん変わる可能性がありますので、いつもしっかりみんなの声を聞いていなければならないと。ただみんなの声は自分の利益で言うことが多いので、本当に全体のためになるのはどういうことかを客観的に見極めないといけない。これが難しいし楽しいという感じです。

【山田】横浜市は378万都市で、人口で言うとニュージーランドとかアイルランドと同じぐらいの人が暮らしているのですけど、動物園が3つあって、大学が2つあって、消防署があって、ありとあらゆる分野に関われるというところが議員の醍醐味です。私は消防士にもなりたかったし、動物園の飼育員にもなりたかったし、医者にもなりたかったけど、そういう色々な活動に関われて、そこに問題があれば改善をして、そこで頑張っている人がいれば後押しするといったことができる立場は、議員以外に中々ないと思います。そういう究極のゼネラリスト的なところで活動できるやりがいを今感じています。小川さんの後で恐縮なのですが、私は自民党の会派で、市議会の構成は小川さんと近い形でして、その中で1年目であっても党内でしっかりと情熱と理屈をもって提案をすると、先輩議員が認めてくれて、しかるべき行政のボタンを押していくことによって実際に形になっていくんです。そういったダイナミズムを体感することができています。いくつか自分が関与した政策等が後々数字となって現れてくることを見ると、弁護士とは違ったやりがいを感じます。先ほど有近さんがおっしゃったような自分の目と耳と肌で感じたものをちゃんとつなげていける、それが何かに影響を与えカタチになっていく場に身を置けるのは、すごくやりがいを感じます。



▲このページのトップへ