弁政連ニュース

特集〈座談会〉

地方議会の弁護士たち
~弁護士が地方議会に進出する意義~(2/6)

【安藤】皆さま、選挙に出馬前の弁護士としての職務形態は如何でしたか。

【山田】最初ボス弁の事務所に4年半務めた後に、修習期が近い仲間と独立しまして、それで今の事務所を立ち上げて12、3年目です。経営者弁護士ですから、時間の調整はある程度自由にできたのですが、父が現職で議員をやっていたこともあり、弁護士業は、結構選挙の直前まである程度普通にやっていました。日中に弁護士業を全部済ませて、本当に空いたところに地元を回るとか、父と一緒に夜の会合に参加するとか、そういったことを出馬前はやっていました。今となっては、もう少し選挙活動を頑張らなければならなかったなと思いますけど、当時はまだまだ選挙の厳しさとか認識が甘かったこともあってですね。結構普通に弁護士としての仕事をしてしまっていました。ベースがあったがゆえに甘えすぎてしまったので、次はこうはいかないぞと思っています。

【小川】私は当時、ボス弁一人・イソ弁が私を入れて4人いる事務所に勤めていたのですが、ボス弁に選挙に出たいと言ったら「じゃあがんばれ」と快く後押しをしていただいて、10月の末に立候補を表明して11月いっぱいで事務所を退職させていただきました。担当していた事件は他のイソ弁にお願いして突然やめさせていただいたので、今でも頭が上がりません。選挙は翌年の4月だったので、12月、1月、2月、3月と弁護士業は一切やらずに朝から晩まで後援会活動と選挙の準備活動をしていました。私は出身が群馬ではなくて、群馬には司法修習がきっかけでやってきて一人暮らしなのですが、親戚とか同級生が誰もいない状況で選挙に出るというのがすごく大変なのだということも、やってみて初めてわかりました。ましてや保守王国の群馬県で民主党の公認で出馬するとなると、逆風も本当に厳しかったのですが、出るときは誰もそれを教えてくれなくて、4か月間孤独だったなと、いま振り返ると思います。そういう感じで事務所もスパッと辞めて、選挙のための準備をひたすらやり続けました。

【有近】私は弁護士4人の事務所にアソシエイトで入っております。選挙の時はたまたま二人目の産後4か月で大方の仕事の引継ぎが済んでいたものの、それ以外の業務をこなしながら、全く知名度のない新人として動き回ったため、非常にハードなスケジュールとなりました。自民党系新人同士の保守分裂選挙で、私と60代男性の一騎打ちでしたが、当時政治分野における男女共同参画推進法が施行された直後だったので、女性の私が公認されるかなと淡い期待を抱いていたのですけど、政治の世界はそんな甘くなくて公認を得られず、私は保守王国山口県で自民党と戦う選挙をやりまして、非常に激しい選挙になりました。産後の体で授乳もあって夜も寝られず、母との別れもあり、めちゃくちゃな2か月間でした。それでも山口県や柳井市のために何かできるのではないかと考え、一生懸命頑張りました。

地方議員の日常

【安藤】地方議会議員の日々の常務、一般的なスケジュール、スケジュールの中で弁護士業やプライベートの兼ね合いというのはどのようにされていますか。

【小川】議員活動についてはそんなに差がないと思いますが、会期中は議会に行って活動することが多いですし、閉会中も常任委員会が開かれたり、視察調査に行ったりして調査研究をしている時間が多いです。土日はイベントや行事等の公務出席があるので、土日の休みというのは基本的に取れないのではないかなと。2020年はコロナで行事がなくなっているので例年よりもゆっくりできましたが、私は未だに独り暮らしですべての時間を自由に調整できるので、空いた時間も地域の人と会ったり色々な現場を見に行ったり、ボランティアの活動をしたりとなるべく予定を入れるようにしています。あんまり休みという休みはない気がします。弁護士の仕事についてですが、法廷には全然立っていません。自分でできる相談や交渉の案件は、年に数件受けていますが、訴訟しなければならない案件は他の弁護士さんを紹介しています。道路直してくれとかこういう政策をしてくれとか、いろんな陳情を受けますが、私の場合は4割くらいは法律相談かなという風に感じています。

【有近】議会があるときは議案の調査や会派の勉強会が連日あり、議会が地元から離れていることもありまして、帰れない日は泊まり込みでやっております。その間の子育ては基本的には保育園と夫ですが、夫も弁護士で多忙なので、姉や父、親戚、友人、近所の人、事務所スタッフ、支援者さん、いろんな人にお願いしまくっております。いわば「お願いしまくり子育て」というのをやらせていただいております。議会以外の時は、情報収集、電話や来客対応のほか、なるべく自分から人に会いに出かけ、集会をこまめに開き、行事にどんどん参加します。子連れで祭りにいったり。人脈作りや勉強のため、積極的に県外視察や人を訪ねるなど、プライベートで出掛けています。弁護士業務の方は、小川先生と同じく、陳情に来られて、話を聞いてみると法律問題が絡むことが多々ありますのでボランティアで出来る範囲のお手伝いをさせていただくことがあります。それ以上の場合は夫や他の弁護士にお願いしています。

【山田】山田私は経営者弁護士として十何年やってきたところもあって、弁護士業もある程度継続している方だと思います。秘書さん等の生活もありますので、そこは最低限維持。ほかのパートナーとの経営共同でやっていますので、最低限売上げを維持していかなければならないという要請もあります。私が法科大学院で教えていた時の教え子に入ってもらいましたので、基本的には一緒に話を聞いて実際の法廷に行ったり中身の方は彼にやってもらう形でやっているところです。ただ、当選前から受けている事件とか事件の特性上私でなければ出来ないというものも結構あるので、そういうのは私が立つという場合も多いです。なので一日のスケジュールとしては朝6時ぐらいに起きて上の子の朝ごはんを作って送り出しをして、そのあとバタバタ家事をやって、下の子を9時に幼稚園に送り、そのあとは10時の法廷だったり、10時の議会だったりで。午後行政と話をした後に地元に帰って地元を回った後に夜の会合、地元の会合に出るというのが多かったですね。法律事務所と市庁舎と裁判所が至近距離にありますので、その間をグルグル。地元も車だと20分の距離なので、あっち行ったりこっち行ったりとやっています。



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