弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

いまこそ再審法の改正を(4/6)

【木谷】裁判官にはいろいろなタイプの人がいますが、一番多い「できるだけ目立ちたくないという裁判官」は、何もしないで再審請求を棄却したいと考えるのです。そういう多数派の人たちは証拠開示の勧告をすること自体に熱意を示さないですね。なぜなら証拠開示の勧告をした結果、有力な新証拠が開示された場合は最終判断が難しくなる、場合によっては再審を認めなければならなくなるかもしれない。そうなるとどうしても目立ってしまう。開始決定をすれば、上で取り消されるリスクも増える。だからそういうことはできるだけしたくないという風に考えると思います。それに対して無辜の不処罰について熱意を燃やす裁判官は、裁量権を最大限に活用して証拠開示の勧告に踏み切るのに躊躇しないと思います。ただ、裁判所をそこまで踏み切らせるには、弁護人の積極的活動が大きくものを言うと思います。

【鴨志田】弁護人がものすごく労力を使って、何年もかけてやっと証拠が出てくるというのが実情で、それでも出てこないという事件もたくさんある。なぜかというと捜査機関の手の内にどのような証拠が保管されているかという情報がないから。まさに布川事件とか松橋事件のように証拠開示によって無罪の方に動く事件がたくさんあるなかで、全く証拠開示に向かわない事件もある。大崎事件では第一次の時は任意で検察官がいくつかの未開示証拠を開示しているのですね。でもそれが逆に仇になってしまって、「第一次であるものはあの時に出しています。他のものは見当たりません。警察にもないですよ、あるとしても全部検察庁に提出しています」というのが第二次請求審の時の回答だったのですね。これを鹿児島地裁は完全に鵜呑みにして、特段この人たちの言っていることに不合理な点はないみたいなことを決定書の中に言い訳のように書いて一切証拠開示の訴訟指揮をしないままあっさり棄却した。それで、即時抗告した頃に、証拠開示をやっている事件が他にこんなにあるのに、なぜ大崎事件だけ証拠開示をしないのかということを、「再審格差」という言葉を作ってマスコミに訴えたんですね。マスコミがやっと報じるようになった。高裁ではたまたま袴田事件で証拠開示の訴訟指揮をした裁判長が異動して福岡高裁宮崎支部に来ていた関係で、そこで初めて「証拠の存否を調べてリストを作って弁護人に開示せよ」と非常に画期的な勧告が出たのです。しかし検察官は全然言うことを聞かなくて、自分たちは独自の判断でこれは出しても差支えがないという個別の証拠を裁判所に開示するという形で、しかし今まであれほどないないと言っていた証拠を213点出してきたのですね。地裁の時に言っていた回答はまったく嘘だったということが分かった。それで、213点出した時に「これで全部だからリストは開示する必要はない。あるもの全部出しているからリストは作る必要はない」といって第二次が終わった。ところが第三次になってまだ18点新しく出てきて、第二次の時にはないと言ったのも嘘だった。まだあって、第二次の即時抗告審の時に現物は出さないでネガが46本ありますと言ってきたので、現物を出せと言ったらフィルムケースの中で腐食しちゃって現像ができなくなっているものもあると言われて、我々は決定を急いでいたこともあって、じゃあそちらで印画できる、プリントできるものだけ出してくれと言ったら500枚できましたといって出してきた。ところが第三次になって、私たちも後顧の憂いがないようにもう一回ネガの現物を出せと言ったら、裁判所が現物を押収してくれて、46本のネガ現物が出てきた。我々で印画したら1240枚全部プリントできました。500枚しかプリントできませんでしたというのも全部嘘でした。検察側はこれぐらい嘘をつくということです。再審請求段階で、未開示の証拠は全部出しなさいという条文がないというとは、こういう現実をもたらすということをもっと多くの人に知ってほしいですね。



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