弁政連ニュース

特集〈座談会〉

弁護士による中小企業支援
-現状と課題-(5/5)

中小企業支援における政策的課題

【伊藤】中小企業センターの取組をする中で、政策的課題を感じること、政治に期待することはありますか。

【八掛】中小企業は、弁護八掛士にアクセスしづらい傾向にありますが、創業期は特に人脈がないとか情報が少ないということで、最初が肝心であるにもかかわらず、弁護士にアクセスできないという問題があります。弁護士の方からも、最初が肝心だから弁護士を使って欲しいとメッセージを発信したいところですが、これから創業しようと頑張っている方々にそのメッセージを届けるのはなかなか難しいのが現実です。その点、議員の方々は、様々なネットワークをお持ちだと思いますので、ぜひ弁護士が支援できるという情報をどんどん伝えていただき、中小企業支援のネットワークの中に弁護士を入れて欲しいと考えております。

それから、創業時の中小企業はお金がないことが多いですね。創業1、2年程度の起業家とお話すると、売掛金が焦げ付いたなどの法的問題に直面していて、「弁護士に頼みたいことがいろいろあるけど、お金がないのです」というお話を伺うこともあります。中小企業は、立上がり時に資金力がなくても、そこで手当をしておけば将来的にはリスクが減って安定した経営ができるかも知れません。逆に、そこで資金がないことによって弁護士のサポートが得られないと、それによってリスクが顕在化して、場合によっては倒産してしまうこともあり得ます。ですから、最初の時期に集中して経済的に補助をするような制度ができるといいと思います。

【土森】今、中小企業の海外展開支援は、政府も力をいれていて、いろいろな補助金や支援があります。例えば、ジェトロ、中小企業基盤整備機構、日本政策金融公庫、商工会議所などが支援をしていますし、政府も様々な補助金制度を設けて、販路開拓のための展示会やフィージビリティ・スタディ、特許出願などの際の支援がなされています。ところが、いざ海外での取引を始めようとして契約書が出てくる段階になると、そこを支援・補助する制度が何もないのが現実です。海外取引先とのマッチングまでは整えたけれど、あとは自分たちでやってくださいという状態になっています。そこが中小企業にはハードルが高いところで、せっかくマッチングできたのに、法務面での支援がないために、取引が先に進まなかったり、契約が相手の言うままのとんでもない不利な内容になってしまったりということが結構あります。ですから、契約段階についても支援制度を作っていただけると、もっと中小企業の海外展開は活発になると思います。日本企業を守るという意味でもそういうことが重要だと思います。

特に海外展開だと、例えば、合弁会社を作って日本企業を支援して国のお金もつぎ込んだのに、合弁契約の中身を検討していなかったために、事業上の問題が生じたり、最悪の場合、撤退せざるを得なくなったときにほとんど全部の財産を合弁相手に渡す形になって、結局税金を使って海外にコンペティターを増やしただけだったという結果になることもありますので、充分な弁護士のサポートも得られる支援制度を作っていただきたいと思います。

【堂野】先日、議員の皆様との勉強会で、事業再生の将来と課題というテーマでお話をさせていただき、意見交換をさせていただきました。中小企業が日本の経済を支えているということで、議員の皆様がそれぞれ問題意識をお持ちになっていて、私もとても勉強になりました。ぜひ、そのような勉強会を定期的に開かせていただきたいと思います。私は、事業再生というテーマでお話させていただきましたが、女性起業家支援や海外展開支援も今後の重要なトピックになるので、そういう様々なテーマについて議員の皆様と短い時間でも意見交換ができればと思っております。また、その場に中小企業庁など政府関係者もいらっしゃると、様々な物事が進みやすくなるというメリットも感じます。

【髙井】現在、弁護士会は中小企業問題に熱心に取り組んでいます。弁護士会は、民間の最先端で中小企業に対応している団体ですから、政府や自治体は、我々の問題意識やノウハウをうまく使っていただくといいと思います。我々と議員の先生方との距離感を縮めて、現場の問題意識を政策に反映していただき、また逆に我々が議員の先生方の問題意識をいただきながら弁護士会で対応していくような連携をとることで、よりよい中小企業対応ができると思います。

於霞が関弁護士会館

(平成28年4月19日 於霞が関弁護士会館)

 


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