弁政連ニュース
〈座談会〉
我が国の「司法」を支える人材を
法曹養成制度改革推進会議の取りまとめを受けて(2/4)
法曹養成制度改革推進会議の取りまとめを受けて(2/4)
司会 柳楽 久司 広報委員会副委員長
今回の推進会議の決定をどう見るか
【柳楽氏】ありがとうございます。それで、本日座談会を始めるに当たって今回出た決定についての全体的な感想をお聞かせいただければと思います。
【大貫氏】6月30日に出された決定本文はわずか6ページで、あれだけ時間をかけたものがたったこれだけの分量に凝縮されるということで、なかなかこれだけでは読み取るのは難しいところで、5月に出た活動領域のあり方に関する3つの分科会の取りまとめ(「国・地方自治体・福祉等」、「企業」、「海外展開」)を全体として読むと、これまで何をしてきたか、今後どうしていくのかがある程度分かるという全体像になっています。それで、プラスの評価としてはこれまでやってきたことの確認と、これからどうしたら良いかという方向性が出てきたということだと思います。他方で、将来の施策に対する具体性がもう少し突っ込めたらと思うのですが、あれだけの人数で検討していくとなかなか具体化するのは難しい。したがって、課題として残されているものは施策内容の具体化だと思っています。
【水地氏】私が主として関与してきたのは司法修習生の支援なのですけど、今回の推進会議は、先の検討会議で出された検討結果を踏まえてその内容を推進するということで、議論の対象がかなり限定的であるという制約がありました。それでも、少なくとも司法修習生に対する経済的支援については、最終的にはその部分が検討できると書かれたことは評価できると思います。ただ、修習に関するその他の点については、検討組織が別になっていましたので、修習全体についてこの推進会議ないし顧問会議で十分に議論できなかった、させてもらえなかったというのが、やむを得ないことでしょうけど残念という思いがあります。
【丸島氏】法曹養成制度改革の問題は、テーマも広く、関係機関・団体、政党を含め意見が多岐に分かれる課題が多くありました。そのため、今回の推進会議決定に至る過程では、大変難しい局面が続きました。そうした経過から見ますと、最終的には、全体としては大方のコンセンサスを得られるような、ある意味で常識的な取りまとめとなりました。しかし、それだけに、この決定を具体化し現実のものとするには、突っ込み不足のところが多々ありますし、残された課題も少なくありません。今後、決定に掲げられた制度面の改善改革を具体的に進めることはもとよりですが、それだけに止まらず、法曹志望者を質量ともに確保していくためのあらゆる努力を関係者が協力して取り組んでいかなければなりません。部分部分の課題対応だけではなく、活動領域拡大などを含め制度全体が最適なものとなるよう、関係者が縦割りを排して協働することが切実に求められていると思います。
これまでに変わった点
【柳楽氏】ありがとうございます。2010年に始まった法務省の検討ワーキングから通算すると足かけ5年以上もやっているわけですよね。これまでの間に具体的な制度改革に着手された例というか、変わった点、具体的な制度改革が行われたよという点はどうだったでしょうか。
【大貫氏】まず日弁連としてこの活動領域の拡大で一番大きく変わったのは、「法律サービス展開本部」というものを設立し、その中で、「国・自治体・福祉等」「企業」「海外展開」という3 つの分科会にそれぞれに対応するセンターを作って、日弁連として、弁護士の活動領域の拡大に正面から取り組むようになったことが挙げられます。例えば国・自治体でいいますと、大阪の方では前からやっていましたけど、行政連携メニューをリスト化することを日弁連から各地の弁護士会に呼びかけて広げていくとか、地域包括支援モデル事業を実施するとか、分科会での議論と同時並行してやってきたものがあります。企業の分野においては前からあったのですが「ひまわり求人求職ナビ」というものの更なる改善をし、さらに後は経済団体との連携を深めて、修習生や弁護士に向けての各種セミナーだけではなく、企業に経済団体を通じて企業内弁護士についての色々な情報を提供するようになりました。海外展開に関して言いますと、中小企業の海外展開を支援するワーキンググループを立ち上げて海外支援の数がだんだん増えてきており、今後も増やしていこうと思っています。これが一番特筆すべきところだと思います。
【柳楽氏】法科大学院と司法試験の関係ではいかがでしょうか。
【丸島氏】法科大学院については、いわゆる組織見直しの促進、つまり法科大学院の学生数・学校数の規模の適正化を図ること、合わせて教育の充実を目指す取組が進められてきました。ご承知のとおり、法科大学院制度は、74校、定員5,590名、入学者5,767名の規模でスタートしました。しかし、その数字は、合格率7 、8割を達成するにはいかにも過大な規模であり、一旦作られたこの規模をどう絞り込むのか、難しい問題だったと思います。入試競争倍率、司法試験の合格状況、定員充足率などの指標を基に組織見直しの促進策がとられ、法科大学院は45校、定員は来年度2, 724名となり、有力校の中でも、来年度の定員を20人から50人程度減員する動きとなっています。また、今年の実入学者は2,201名となっています。そして、法科大学院の教育内容は、制度発足時と比べて教育手法やカリキュラムなどを初め多くの面で充実が図られてきました。司法試験合格率は、2005年から2013年まで、累積で全体では49%、上位10校では60%以上、有力校では70%~80%の範囲となっています。また、2013年度の既修の修了者が修了の年に直ぐ合格した割合は、全体でとなっています。司法試験制度については、法科大学院修了後5年以内3回という受験回数制限がありましたが、よりシンプルに5年以内5回となりました。受験生には歓迎されましたが、他方で、司法試験に合格しない受験者が累積で増加し、合格時期や合格者数にも一定の影響を与えるのではないかとの指摘もあります。また試験科目については、負担軽減の観点から短答式試験が3科目になりました。
【柳楽氏】それではその司法試験の後に位置づけられている司法修習の関係について水地先生お願いします。まずは変わった点。
【水地氏】司法修習の実質というか内容の面につきましては、新修習になって従来と比べて期間が短くなったりとか、前期修習がなくなったとか、色々と問題が指摘されてきた中で、68期から導入修習が実施されるようになったというのが一番大きな変化だと思います。そのほか各実務修習地での分野別修習の実態がバラバラなのではないか、全体としてさらに充実させるということで各分野ごとにガイドラインを導入して作成したという変化はあります。選択型修習についてはさらに充実を目指すということで様々な工夫を各会にお願いしているところではありますが、各地の実情でなかなかむずかしいところがあります。もう一つの大きな柱の経済的支援につきましては、これは検討会議の段階で、貸与制を前提にした実務修習地への移転費用であるとか、希望者の入寮だとか、もう一つ兼業の許可の緩和という若干のことはされましたけど、大きな経済的支援にはいかないまま現在に至っています。ただ、今回の決定で司法修習生に対する経済的支援のあり方を検討すると明記されたのは前進であると思っております。

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