弁政連ニュース

特集〈座談会〉

女性の活躍で社会が変わる
~政界、経済界、弁護士会における
 男女共同参画の取組と課題~(3/5)


【市毛】 弁護士会の役員になってみて、女性弁護士の期待されている場はまだ沢山あり、そのためにやるべきこともあることが見えてこられたのですね。

いろんなキーワードが出てきましたが、各界の現状と課題について、自由にご発言ください。自由にやり取りしていただければと思います。

【岩田】 女性の活躍を議論するとき、私は、いつも二軸が必要だといっているのですけど、一つは子育てなどとの兼ね合いで仕事が続くかどうか。そして、もう一つは、ただ仕事が続くのではなく、キャリアを重ねて活躍できるかどうか。どっちかだけだと女性の活躍とはいえない。

二つの軸で国際比較しながら日本の現状を見てみると、まず、育児期に仕事を続けられるかどうかということなのですが、年代別就業率グラフがM字型カーブなのは日本と韓国だけです。他の国では、女性が育児期に仕事を辞めたりしないからM字にならない。それからもう一つ、キャリアアップの方です。管理職に占める女性率は日本と韓国だけ一割なんです。他の国は大体三分の一、中にはフィリピンのように五割を超える国もある。一割とは、本当に悲しい数字です。取締役クラスだともっとひどい。

取締役の女性比率が多い国から並べると、一番多い国はノルウェーで、44%なんですね。日本は、後ろから数えて五番目で1%です。日本の後ろ四か国は湾岸諸国です。女性は、外出するときにヴェールをかぶらないといけない。運転免許が取れない。そういう国しか日本の後ろにいないんですよね。二つの軸で考えたとき、日本における女性の活躍というのは恐ろしいほど遅れています。

じゃあ変化がないかというと、実はそうではない。特に大手企業の変化は著しい。第一の仕事の継続の軸ですけど、これは育児休業法があったり、次世代育成支援対策推進法があったり、制度が整備されている。大手企業では出産育児を理由に辞めるということはまずなくなっています。資生堂も、とっくに出産退職、育児退職はなくなっています。女性が仕事を継続できるようにはなっている。これは変わってきているところだと思いますね。管理職・役員は相変わらず少ないのですけど、育成して増やそうという意識はトップにあって、安倍政権のスローガンが背中を押していると思います。それから男女雇用機会均等法一期生が50歳くらいになって、ちょうど役員適齢期になります。ですから、真面目に女性を雇って育成して評価している会社は、そろそろ役員の候補者が出てくるそういうタイミングでもあります。今年の春、いくつもの企業で女性初の執行役員が登用されたというニュースも出ましたとおりです。

そういった大手企業においても、残された課題はいくつかあるんですけど、最大の課題は働き方の常識が男性型であるということです。今のままだと、女性は働き続けてもキャリアアップができないんです。男性型のスタンダードに女性は合わせられないからです。かつて、アメリカでも同じ問題があって、アメリカではマミートラックといわれていました。社員が一斉にトラックで競走しているときに、出産育児をする女性たちは、マミートラックという別のトラックを走っている。全然走り方が違うと。

ワーキングマザーは全然活躍できない。日本もそうなりかねない。そうならないためには、残業が当たり前、会社の都合でいつでも転勤が当たり前というスタンダードを変えるしかない。あとは、男性も育児を担うということですね。企業がいくら支援しても行政が支援しても、育児を女性だけが担っているという状況を変えない限りは、仕事は続けられるけどキャリアが上がらない。

要するに、残された課題は男性問題。男性の働き方の常識を変える。加えて、男性の生き方の常識を変えて育児をちゃんとやるというのが残された大きな課題だと思います。

【千葉】 私が政治の世界に入った当時、女性議員は物珍しい状況でしたが、その後、マドンナブームとやらでメディアが取り上げたこともあって、波に乗るような状況にもなりました。ただ、なかなか継続しなくて、結局、その後も、女性議員は増えそうで増えない状況が続いてきました。特に、政治は雇用関係と違って、身分や何かが保障される場ではありませんから、そういう意味で伝統による障壁があると思います。

また、志はあっても、組織など大きな力が支えにないと、なかなか政治に接点を持つことができない。女性は、これまでも社会の大きな力の中に加わっていない。一定のキャリアを積んだり責任ある立場を獲得したりしていない。ですから、政治においても部外者みたいな形になってしまって、なかなかアプローチできない。クオータ制の選挙制度を採っている国もありますけど、日本はそういうものがないのと同時に、小選挙区制、非拘束名簿式の比例選挙制を採っている。このような現状では、女性が国政に分け入ってきちっと場を占めることは容易ではないと感じます。決して、政治家が男女共同参画の意識を欠いているということではないと思うのですが、国政の場に男女共同参画を実現していくのはとても難しいと思っております。

他方で、最近とても嬉しく思うのは、女性の首長が増えてきたことです。そういうところで女性が大いに活躍し、これをみんなで支えるということができれば、一つの転機になっていくと思います。首長は、政策決定の幅広い権限を持っているので、いろんなことを自分なりに工夫してできる。また政党で選挙するというより、県民党、地域党的な要素が大きいので、みんなで応援することができます。難しい問題ではなくて、生活に身近な問題に取り組むために、何かやってみようかな、という女性が今後たくさん出てくるといいですね。

【市毛】 女性弁護士の首長もいらっしゃいますね。

【千葉】 そうですね。これまでは専業主婦でしたというと、有権者も心配することがあるかもしれませんが、弁護士でいろんな皆さんの相談に乗っていたよというと安心してもらえる点はある。


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