弁政連ニュース
クローズアップ〈座談会〉
被災地自治体で
活躍する法曹たち (2/3)
活躍する法曹たち (2/3)
日弁連のバックアップ体制
【出井幹事長】岡本さんは、日弁連では災害復興関係や行政関係の委員会に入って、日弁連内外で自治体でのいろいろな活動もされているのですが、その観点からいかがでしょうか。
【岡本広報委員会副委員長】弁護士で災害復興支援に関わっていて最初に感じたことは、何にも優先して、被災した住民の声や提案を聞かなければならないということです。さらに、それを実現するには自治体から声を上げていただく必要があるという点です。そのためには、外から弁護士が発言するだけではなく、行政の方たちと協働して一緒になって推し進めることをしないと、声も届きにくいものです。例えば、避難所に入って法律相談をする場合、行政の方の手引きがないと相談活動ができません。常に連携が必要だと思います。さらに、弁護士は、従来から個別の案件の法解釈による事案解決は得意ですが、政策形成や提言などの活動については、まだノウハウを持っている方は少ないと思います。そこで、被災地に任期付職員として弁護士が入ることで、行政の現場執行の解決ノウハウと、法曹としての法解釈能力の両方を身につけることができると考えておりました。そうしたところ、地道な啓発活動の甲斐もあってか、昨年、岩手県と宮城県が弁護士を募集し、今年1月の採用に繋がりました。東北地方の自治体としては初ということになります。そのような経緯で、菊池さんと大岩さんにお聞きしたいのですが、東京で弁護士をしていた中で、自治体職員になることが決まったわけですが、事前に被災地の課題とか、行政機関で働くことについて勉強する機会はあったのでしょうか。
【菊池氏】応募前にしっかり勉強する機会はほとんど無かったですね。私は岩手の出身だったので、震災時から気になっていたのですが、その後震災関係にあまり関われておらず、そのような状況に負い目や葛藤などがあった中で、募集をたまたま見つけて応募に至ったというのが実態でした。その時点では詳しいことはわかっておらず、赴任する三ヶ月前頃に採用が決まった後もあまり勉強はできませんでした。もっとも、赴任前に岡本さんはじめ日弁連の災害対策本部の先生方に研修を行って頂いたり、震災関係で尽力されている実務者の紹介をして頂きそのお話を伺ったりして、その点は大変勉強になりました。
【出井幹事長】大岩さんは。
【大岩氏】私も勉強というのはほとんどない状態で、ただ、去年、NPOなどいわゆる社会起業家をサポートする団体に入ったこともあり、それまでよりも広く社会のことに関心を持つようになりました。また、友人たちと被災沿岸部に行って地元の方や現地で活動されている方の話を聞いたりして、まだまだ復興に時間がかかるし、やるべきことは多いと感じました。そうした思いと、弁護士五年目となって新しいことに挑戦してみたいという思いが重なっていたところに宮城県の募集があって、今まで何もしてなかった自分でもいいのかという思いもあったのですが、まずは応募して選ばれれば飛び込もうという気持ちで応募しました。
【岡本広報委員会副委員長】日弁連主催により、被災地自治体に赴任する弁護士のバックアップ研修が始まっております。第一回受講生が菊池さん、第二回受講生が大岩さんでした。
【柳楽編集長】どのような研修なのでしょうか。
【岡本広報委員会副委員長】第一回も第二回も、実は受講者は先生方お一人ずつでした。私も含む講師が三人、震災関係の法律問題や、住民合意形成の手法などを半日かけてレクチャーする、というものでした。少しでも赴任する方と思いを共有したいという趣旨で企画しています。
【出井幹事長】菊池さんどうでしたか。三人の講師陣に一人。レクチャー。そこでためになったのは何か。
【菊池氏】内容は勿論そうなのですが、特にためになったのは人間関係だと思います。岡本先生はじめ復興に尽力される先生方と知り合いになれたということ。あとは心構えや姿勢でしょうか。講師の先生方皆さんから強い思いが感じられました。また、弁護士の精神を内部で生かして欲しいと言われたことが強く心に残っています。
【出井幹事長】大岩さんは。
【大岩氏】私も同じことを思いました。研修の際の資料が今も手元にあって、必要に応じて参照していますが、それ以上に、心構えを学んだり、復興のために熱心に活動されている先生方と繋がりができたことが非常に大きかったです。
【出井幹事長】災害復興の委員会でそういうことをしているんですね。今後も被災地自治体の支援プロジェクトというか、被災自治体に入る人はお二人に続くと思うのですが、そういうバックアップ体制というのがあるということですね。
【岡本広報委員会副委員長】はい、当初は個々の弁護士の活動でしたが、今では日弁連と協力し、被災自治体で採用が決まった方に繋いでいただいています。お二人の後にも、既に何人かの弁護士に同じ研修を実施しています。
【出井幹事長】これまでの執務環境と全く違う自治体というところに入っていくに当たっては弁護士側にも色々な不安があると思うのですが、結構手厚いバックアップがあったのですね。
【岡本広報委員会副委員長】手厚いといっても、講師も必ずしも被災地の人間ではないので、あくまで活動の一端をご紹介することがメインになります。今お話ししたのは、自治体に赴任する前のバックアップの話ですが、現在中心に取り組んでいるのは、赴任後の横のネットワークの構築です。
専門家ネットワークによる支援
【大岩氏】岡本先生を中心に、被災地任期付職員のバックアップネットワークを作っていただきました。日弁連の災害復興支援委員会の弁護士や、地方財政、地方自治、都市計画、行政法、防災を専門とする学者の方々、復興庁の職員の方、被災自治体から岩手、宮城、福島の各県の職員の方、全国市長会の方などがメンバーです。私が他の部署から相談を受けて、例えば地方財政の問題に関することで分からないことがあったらそこに問い合わせればアドバイスをいただける、というチームです。
【菊池氏】いざとなったらこのような専門家に質問できるという体制は大変心強く思っています。

特集
クローズアップ
トピックス
- 支部報告ⅩⅤ:石川県支部
より大きなブリッジの構築を目指して - 支部報告ⅩⅤ:鹿児島県支部
-国会議員との朝食会- - 自由民主党青年局と日本弁護士政治連盟企画委員会青年部との昼食懇談会
- 全国弁護士市長会開催される
お知らせ・ご案内