弁政連ニュース

特集〈座談会〉

行政府への出向者 大いに語る
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若手弁護士へのメッセージ

【鈴木】最後に、皆さんの体験から若手の弁護士に対してメッセージをいただければと思います。

【相澤】法律というのは社会や経済のルールなわけですが、そのルールを知っているだけでは足りなくて、その経済や社会の実態を知っていて、実態を肌で感じているからこそ本当に適切なアドバイスなりルールの解釈ができるのだろうと思います。その意味で、法曹界の枠にとらわれない、幅広い経験に積極的に挑戦してもらいたいと思います。特に政治・国策の世界にいるとマクロの視点が身に付きますので、私が不勉強だったこともあるのですが、とても視野が広がったことを感じます。できれば2、3年ぐらい弁護士としての経験を積んで基礎的なものを身につけてから入られたほうが、貢献できることも吸収できるものも多いので、選べるならそのほうが望ましいのかなという気はします。ただ、国家戦略室は、普通の行政官庁に入るのとは違って、自分の専門性を磨くのにはあまり適していないので、今後の弁護士業のため、自分のためというよりは、やはり国を良くしたいという思いを強く持っている人に来て欲しいですね。

【岡本】リーガルリテラシーというか、もっと根本的に「法の支配」を行政や政治の分野に及ぼすということは本当に重要なことだと思います。色々な世界を見たほうがいいと思うので、若い弁護士は訴訟の技術を身につけた上で、出向の機会があれば行政庁に限らず、色々なところに飛び出ていただきたいなと思います。例えば、地方議会や地方自治体のサポート、ここにはまだまだ弁護士が不足しています。こうしたところに弁護士がもっと入っていかなければ、地域主権改革も真の意味では進まないのではないでしょうか。それから「新しい公共」と言われている分野ですね。NPO であるとか、そういう政府とは違う立場から公共分野を担っている方々、こういう人たちに対するリーガルサポートというのも非常に不足しています。こうした分野でのニーズは確実にあると思いますので、皆さんにも是非そういう世界に興味を持っていただきたいと思います。日本弁護士連合会や各単位会もこのあたりを強く意識して積極的な活動をすべきだと思います。

【江黒】初めは戸惑った部分もあったのですが、飛び込んでみて思ったことは、出向や行政の仕事を行うことは弁護士の仕事だけではできないような 様々な経験ができ、視野を広げるという意味でよいことだと思いますので、興味のある分野があったら是非トライしていただきたいと思います。

【島村】税制調査会でも情報公開法の関係でも政治家の先生方の活躍の場面を間近で見ることが多いのですが、法曹資格のある議員の方が結構いらっしゃいます。彼らの審議会での発言等を見ていると、大変シャープで、中身にきちんと入ってこられるんですね。よく「政府は官僚に操られている」というようなことを言われますが、私が見る限り、とくに法曹資格を持っている先生方は全くそんなことはなく、バシバシ行政に対して詰め寄って、あるべき方向性をきちんと筋を立てて示すことができる。いうまでもなく、国会議員は法律を作るのが仕事ですから、やはりそういう人たちがこれからはきちんとした議論をしていくというのが必要なのではないかということを強く感じています。そうすると、我々法曹資格を持った人間が、高い志を持って国政に入っていくということに大変意義があると思いますので、どんどんチャレンジしていただけたらいいなと思います。そのためにも1つの足掛りとして、行政組織に入って行政の仕事のやり方がどういうものか見ておくというのも、1つ意義のあることかと思います。

【鈴木】どうもありがとうございました。

(平成22年7月27日 於霞が関弁護士会館)

於霞が関弁護士会館


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