弁政連ニュース

日本弁護士連合会会長のご挨拶

日本弁護士連合会会長 宇都宮健児

市民の目線で
第二次司法改革を


日本弁護士連合会会長
宇都宮健児


2010年度・2011年度の日弁連会長に就任するに当たり、皆様方にご挨拶申し上げます。

新しい日弁連執行部は、「市民の目線で第二次司法改革」を基本方針として掲げます。改革の原点を見定めるには「弁護士は今、市民の身近にあって何をすることを求められているのか」を常に問い直すことが必要です。

一つは、貧困と格差が拡大する社会における、弁護士の「社会生活上の医師」としての活動です。貧困問題対策本部を立ち上げて、生活保護や労働相談などの活動を全国的に推進します。このような活動を、幅広く継続的なものにするためには、弁護士の主体的取り組みとともに、民事法律扶助の拡充がぜひとも必要です。

もう一つは、えん罪をなくすための刑事弁護人としての活動です。被疑者国選制度を担うとともに、全面的国選付添人制度の実現を目指します。取調べの全過程の可視化は、時機を逸することなく早急に実現すべき課題です。裁判員裁判に取り組みつつ、被告人の弁護権・防御権を守る立場から検証し改革を図っていきます。

拝金主義のはびこる世の中にあって、弱者の味方としてこのような仕事に情熱的に取り組む弁護士こそ、市民が求めてやまない弁護士像です。社会的・経済的弱者に光が当たる改革の担い手となる「人」をどう確保するかは、司法改革の根幹をなす問題です。

ところがこの不況下に、給料なしで法律事務所に所属する「ノキ弁」、就職できなかった「即独弁護士」など、経済的に不安定な状況に置かれている新人弁護士が増えています。法科大学院で学ぶための奨学金で多額の債務を抱える者も少なくありません。これに加えて修習資金の貸与制が導入されれば、さらに重い負担がのしかかります。

修習資金の貸与制は法曹資格を単なるビジネスのための個人的資格にしてしまい、改革の根幹を掘り崩す危険性を孕んでいます。合格率の低迷や新人弁護士の厳しい状況が知られるにつれて法曹志望者そのものが減りつつありますが、貸与制の導入は、この傾向にさらに拍車をかけることとなります。日弁連は、貸与制の導入阻止・給費制の維持を求める運動に取り組みます。

皆様の力強いご指導・ご支援をお願い致します。

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